日立グループは,環境課題に対する経営姿勢と環境への取り組み実績,CSR報告をまとめた「日立グループ環境報告書2009」を2009年7月31日に発行するのに伴い,環境経営の進ちょく状況を明らかにした。それによると,2008年度における国内のCO2排出量は,2007年度より259kt減の2844ktで,1990年度比では14%削減となった。これは,「2010年度のCO2排出量を1990年度比で12%削減」するとした目標を2年前倒しで達成したことになる。

 日立グループでは2008年度,環境負荷の低減を目的に約102億円を投資した。このうち,約77億円を省エネのために投じ,(1)グループ全体のCO2排出量の6割超を占める素材/材料分野の製造工程を中心とした燃料転換(重油から天然ガスへの切り換え)(2)各事業所における省エネ施策の実施――を推進してきた。この結果,CO2排出量を50kt削減することに成功した。例えば日立電線の高砂工場(茨城県日立市)の場合には,PLCを使用することで負荷変動に応じた空調の自動制御が可能なシステムを独自開発し,クリーンルームの年間CO2排出量を改善前の3割に当たる約800t削減している。

 製品輸送においても,積載効率の向上を図ると共に,鉄道輸送などへのモーダルシフトを推進した結果,実質生産高輸送エネルギ原単位*1を2006年度比で10.5%削減した。例えば原子力発電所の場合,使用する配管などをブロックモジュール化して搬送することで,輸送時の年間CO2排出量を約38t減らしている。

 日立グループは,「環境ビジョン2025」という長期計画を策定し,2025年度までに「製品を通じて年間1億tのCO2排出抑制に貢献すること」を目標に掲げる。具体的には,発電などのエネルギ供給分野で7000万t,産業/交通/生活などのエネルギ消費分野で3000万t抑制する。これを達成するには,高信頼/高品質な技術に裏付けされた環境ビジネスを推進していく必要があるという。

 具体的には,高効率な石炭火力発電事業や原子力発電事業,それに伴う保守/サービス事業,蓄電やスマートグリッド*2などの技術を生かした再生可能エネルギ事業を拡大していく。加えて,環境負荷を低減するハイブリッド鉄道やハイブリッド自動車システム,物流システムなどの「グリーン・モビリティ」と,環境配慮型データセンタ事業などをグローバルに展開。併せて,こうしたシステムを支える産業向け高効率インバータや変圧器,産業/自動車用リチウムイオン電池などのキーデバイスの強化や,家電製品の省エネルギ化などを推進していく。

*1 実質生産高輸送エネルギ原単位 省エネ法で定義された輸送の原油換算エネルギ量(kL)を実質生産高で割った値。

*2 スマートグリッド 電力インフラ技術と情報・通信インフラ技術を融合して集中型大容量電源と新エネルギなどの分散電源を共存させ,従来の供給信頼性を維持しながら高効率に電力供給を行う電力流通システム。