決算説明する東芝 代表執行役副社長の村岡 富美雄氏
決算説明する東芝 代表執行役副社長の村岡 富美雄氏
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 東芝は2009年7月29日,2009年度第1四半期(2009年4~6月期)の決算を発表した。売上高は対前年同期比17%減の1兆3397億円,営業損益は同147億円悪化の376億円の赤字,純損益は同462億円悪化の578億円の赤字となった。対前年同期比ではリーマン・ショック以前の2008年度第1四半期との比較になるため,大幅な減収減益となっているが,世界同時不況後の直前期(2008年度第4四半期)と比べると,営業損益が364億円改善している。これは半導体事業の改善や固定費の削減効果によるものとする。

 セグメント別の営業損益は,「デジタルプロダクツ」が対前期比204億円改善の48億円の黒字,「電子デバイス」が同812億円改善の442億円の赤字,「家庭電器」が同71億円改善の46億円の赤字となっている。一方,「社会インフラ」の営業損益は季節要因によって同713億円悪化し,66億円の黒字にとどまった。各セグメントの営業損益は,東芝社内の計画をいずれも上回ったという。例えば,デジタルプロダクツでは営業損益ゼロの計画に対し48億円の黒字,電子デバイスでは540億円の赤字の計画に対し,442億円の赤字となった。なお,デジタルプロダクツに含まれるパソコン,テレビはいずれも黒字,携帯電話機は赤字だった。

 電子デバイスに含まれる半導体事業は,売上高が対前年同期比23%減の2252億円,営業損益が同60億円悪化の362億円の赤字となっている。営業損益は,メモリが比較的好調だったことから,計画値(440億円の赤字)を上回った。なお,営業損失362億円の内訳は,「ディスクリート」が10%,「システムLSI」が55%,「メモリ」が35%である。2009年度第2四半期は,さらに上向く見通しであり,半導体事業全体で営業黒字を見込む。内訳は,メモリが黒字,ディスクリートが若干の黒字,システムLSIが損益ゼロか若干の赤字と予想する。

 NANDフラッシュ・メモリに関しては,想定以上に需要が旺盛で,価格も上昇してきたことから,増益が見込めるとする。同社はNANDフラッシュ・メモリの微細化に力を入れており,2009年7月には32nm世代品の量産を開始した。32nm世代の生産比率は2009年末までに30%,2010年3月末までに50%に高める計画である。また,同社は米Apple Inc.からNANDフラッシュ・メモリの長期供給に関する前受金5億米ドルを受け取っており,2009年度第1四半期のフリー・キャッシュフローが588億円と大幅に改善した。

 半導体工場の稼働率も改善している。NANDフラッシュ・メモリを生産する四日市工場は,これまで30%の減産を続けてきたが,第2四半期からフル稼働に移行する。システムLSIを生産する大分工場は,最近停電などのトラブルがあったものの,デジタル家電やゲーム機,自動車向けの製品が好調で,稼働率は第1四半期の80%から第2四半期は100%になる。システムLSIを生産する125/150mmラインでも第1四半期の70%から第2四半期は90%,200mmラインも50%から70%に引き上げる。ディスクリートを生産する125/150/200mmラインの稼働率は,第1四半期の80%から第2四半期に90%となる。なお,光半導体を生産する工場の稼働率は,第1四半期,第2四半期とも40%の水準である。

 固定費の削減に関しては,2009年度第1四半期に870億円を削減した。これは東芝社内の当初計画を310億円上回る水準とする。第2四半期も同規模の固定費削減が可能と見ており,年間で3300億円を削減するという社内目標をクリアできる見通しだという。

 なお,2009年度通期の業績見通しに関しては,下期以降の市況が不透明なため,前回発表の数字から変更しなかった。売上高が6兆8000億円,営業利益が1000億円,純損益が500億円の赤字となっている。