オリンパス,カーボン・ナノ・ファイバを利用したSPM用カンチレバーを発売

  • 松田 千穂=日経ものづくり
  • 2009/07/29 16:25
図1-1◎探針にカーボン・ナノ・ファイバを利用した「OMCL-AC160FS-B2」。カンチレバー部全体。
図1-1◎探針にカーボン・ナノ・ファイバを利用した「OMCL-AC160FS-B2」。カンチレバー部全体。
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図1-2◎マイクロ・カンチレバーの先端にある探針支持部。
図1-2◎マイクロ・カンチレバーの先端にある探針支持部。
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図1-3◎探針支持部のさらに先端に成長させたカーボン・ナノ・ファイバ。
図1-3◎探針支持部のさらに先端に成長させたカーボン・ナノ・ファイバ。
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図2◎ポリシリコン薄膜の表面を測定した際の画像の比較。新製品(上)は従来製品(下)に比べて,初期画面と60回走査時の画像の劣化が少ない。
図2◎ポリシリコン薄膜の表面を測定した際の画像の比較。新製品(上)は従来製品(下)に比べて,初期画面と60回走査時の画像の劣化が少ない。
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 オリンパスは,走査型プローブ顕微鏡(SPM)に取り付けて使うマイクロ・カンチレバーの新製品として,探針にカーボン・ナノ・ファイバを利用した「OMCL-AC160FS-B2」と「同AC240FS-B2」を発売した。従来製品に比べて高精度な測定が可能で,交換頻度も減らせる。共振周波数(大気中)は,前者が300kHzで後者が70kHz。ばね定数は,それぞれ42N/mと2N/m。いずれも18チップ入りで,価格は37万8000円(税込み)とする。

 SPMの用途としては,工場での品質検査や故障解析のほか,半導体や磁気ディスク,光ディスク,液晶パネル,有機EL素子といった薄膜電子デバイスの加工材料表面に関する研究などが挙げられる。こうした用途では,表面形状の計測データを複数画面にわたって,あるいは長時間にわたって安定的に取得することが求められる。しかし,従来のマイクロ・カンチレバーの探針では,十分に注意しないと短期間で先端部が摩耗して太くなってしまう。測定者が熟練していないと,安定したデータを取得できず,しかも頻繁にチップを交換しなければならない,といった課題があった。

 そこで同社は,名古屋工業大学教授の種村眞幸氏との共同研究により,カーボン・ナノ・ファイバをマイクロ・カンチレバーの探針とし,摩耗しても先端径の変化の度合いが小さくて済む略柱状のナノ・ファイバの選択成長技術を開発した。一部に経済産業省2007年地域新生コンソーシアム研究開発事業(委託事業)を利用して量産技術を開発し,今回,カーボン・ナノ・ファイバ探針をもつマイクロ・カンチレバーを製品化した。

 従来の走査型プローブ顕微鏡用マイクロ・カンチレバーの探針は,コーン型やピラミッド型形状をしており,探針は根元から先端に向かって徐々に細くなっている。これに対して新製品では,従来のシリコン製マイクロ・カンチレバーの探針を支持部として,さらにその先端に,長さが約200nmの柱状突起を形成している(図1)。柱状突起の太さは直径20~50nm程度。アスペクト比が大きいため,狭い溝や急峻な角度をもつ微細構造の表面形状を従来に比べて高精度に測定できる。

 カンチレバーとしての寸法は,OMCL-AC160FS-B2が長さ160μm×幅50μm×厚さ4.6μmで,同AC240FS-B2が同240×30×2.7μm。それぞれ,カーボン・ナノ・ファイバ探針を支持する部分の長さは14μmと15μmで,その先に12°の傾きでカーボン・ナノ・ファイバ探針を形成している。この傾きについては,6~18°の範囲で制御が可能だ。

 新製品のもう一つの利点は,カンチレバーの交換回数を減らせることだ。同社によると,従来の探針を鉛筆の芯(先端部)とすると,新製品はシャープペンシルの芯に例えられるという。装置測定条件の設定によっては探針に大きな力が加わり,その状態で数十画面の走査測定を行うと,従来の探針では先端が摩耗して太くなる。すると,初期の測定画像と比べて解像度の低下が目立つことがあった。それに対して新製品は,繰り返しの走査によって摩耗しても,先端部の太さの変化が小さいので,画質の劣化を抑えられる(図2)。このため,交換頻度を低減できる。

 なお,同社は新製品の関連資料を,2009年7月31日まで開催中の「第20回マイクロマシン/MEMS展」(東京ビッグサイト)に展示している。

連絡先:オリンパス 精密技術開発本部 MEMS開発部
電話:042-691-7403