図1 日立製作所 執行役会長兼執行役社長の川村隆氏
図1 日立製作所 執行役会長兼執行役社長の川村隆氏
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図2社会イノベーション事業の概要
図2社会イノベーション事業の概要
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図3 完全子会社化する5社
図3 完全子会社化する5社
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 日立製作所は2009年7月28日,上場子会社5社を完全子会社化する目的で,普通株式を公開買付け(TOB)で取得することを発表した(ニュース・リリース)。2009年度内メドに完全子会社化をする意向で,2009年8月20日に買い付けを開始する。同社によると,完全子会社化に必要な資金は2790億円に上るという。同社 執行役会長兼執行役社長の川村隆氏は「『社会イノベーション事業注1)』を通じて,日立を復活,再生させる」と決意を表明した(図1,2)。

注1)日立製作所は,情報通信技術に支えられた社会インフラを構築する事業とした。具体的には,情報通信システム事業,社会インフラ事業,そして社会インフラの発展を支えるLiイオン2次電池事業という。

 完全子会社化するのは,日立情報システムズ,日立ソフトウェアエンジニアリング,日立システムアンドサービス,日立プラントテクノロジー,日立マクセルの5社である(図3)。

 このうち,日立情報システムズ,日立ソフトウェアエンジニアリング,日立システムアンドサービスの3社は情報通信システム事業を強化することを目的とする。システムの構築から運用まで提供することで競争力を高める。「技術力の高いグループ会社と,本社の情報通信グループ一体化して運用したい」(同氏)と理由を説明した。

 日立プラントテクノロジーは,社会インフラ事業の強化を目的とした。具体的には,新興国を中心に電力や水道といった公共システムの事業を,先進国ではデータ・センターの省エネ対策といった事業を推進する。

 日立マクセルは,Liイオン2次電池事業の強化を目的に完全子会社化する。日立製作所は,Liイオン2次電池を「環境負荷低減対策を進め,社会イノベーション事業を支えるキー・デバイス」(同氏)と位置付けた。現在,日立マクセルのLiイオン2次電池を用いた製品は民生用が多いが,今後は「社会インフラや産業用の大型電池を開発していく」(同氏)との方針だ。

 日立製作所はこうした構造改革によって「2010年度に最終損益を必ず黒字化する」(同氏)と表明した。同社は,2008年度通期の当期純利益は7873億円の赤字を計上し,2009年度も2700億円の当期純損益を見込む( Tech-On! 関連記事1)。2009年7月28日に発表した2009年第1四半期(2009年4月~6月)の連結決算は,売上高が1兆8929億円(前年同期比26%減),当期純損益は808億円の損失だった( Tech-On! 関連記事2)。