TG4gには現在,欧米やアジアの企業が多数の技術提案を行っているが,NICTらの提案は多数派の一角を占める。NICTらは今後,ほかの欧米企業との連携を模索しながら,標準方式への勝ち残りを目指す。
約10年の連続使用を想定
IEEE802.15委員会のTG4g部会は,電力やガス/水道メーターの遠隔読み取り用通信方式の物理層標準化を,2009年前半から開始していた。主に屋外で利用する無線方式で,データ伝送速度は40kビット/秒以上で1Mビット/秒以下と,低速の通信方式を規定する。電池駆動のメーター機器において,約10年の連続使用を要求条件としているため,通信方式には超低消費電力の技術が求められていた。NICTらが提案したのは,一次変調方式に2値あるいは4値のGFSK(gaussian filtered frequency shift keying)を用いる技術。50k,100k,200k,400kビット/秒の伝送速度を実現する。極めて低消費電力であることを特徴としており,同時に802.15.4eに提案中のMAC制御手法と併用すれば,4.4Ahの電池を使った場合で約10年間の連続使用に対応できるという。送信出力は最大10dBmで,最大150mの伝送が可能。1チャネル当たりの周波数帯域幅は200kHzで,2チャネルのチャネル・ボンディングに対応する。950MHz帯および400MHz帯での利用を想定する。複数台の通信機器を数珠つなぎにしてデータを伝送する,マルチホップ接続が可能である。例えば複数の一般家庭のメーターをマルチホップしながらデータを集計したり,集合住宅の各戸のメーター読み取り値を数珠つなぎに集計する用途に対応できる。
NICTらの今回の提案は,TG4gに対して個別に提案されていた技術を集約させたもの。同作業部会には現在,同様に変調方式にFSKを利用する技術提案を,米Silver Spring Networks社や,AMI大手であるElster社らが行っている。NICTらは既に,Silver Spring NetworksやElster社との技術提案とのすり合わせを行っている。すり合わせが終了した部分に関しては,NICTやSilver Spring Networks社の技術提案の中に組み入れられており,今後最終的なFSK方式の一本化に向かうもようだ。TG4gではこのほか,直接拡散方式のスペクトラム拡散技術を提案する企業グループや,OFDMを提案する企業グループなどがある。次回会合以降,技術提案の一本化に向けた作業が進められることになる。