東北大学,磁気抵抗比1056%のMTJ素子を開発
東北大学は,磁気抵抗(MR)比1056%を示す強磁性トンネル接合(MTJ)素子の開発に成功した(PDFの発表資料)。3枚の強磁性膜(CoFeB)と2枚の絶縁膜(MgO)で構成した二重のトンネル障壁の構造を採用し,中間の強磁性膜の厚みを最適化することで実現した。これまでの素子構造を用いたMTJ素子の磁気抵抗比は最高で604%だった。
開発したMTJ素子の構造は,CoFeB/MgO/CoFeB/MgO/CoFeBである。一般に磁気トンネル素子の抵抗値は絶縁層を厚くすると大きくなる。このため絶縁層を2枚にした二重トンネル障壁構造のMTJ素子は抵抗が直列配列になり,素子全体の抵抗値が大きくなりすぎて,実用的ではなかった。そこで今回,中間の強磁性電極の厚さを最適化することで,同じ絶縁層の膜厚を持つ基本構造CoFeB/MgO/CoFeBのMTJ素子よりも低い抵抗値を実現したという。具体的には強磁性膜の厚さ1.2nm,電圧±0.1V前後を印加した場合に磁気抵抗比が最大となることを見い出した。東北大学は,今回の結果はこれまでの常識を完全に覆す結果であり,何らかの新しい物理的効果の存在を示唆しているとみている。
不揮発性メモリーや磁気センサー,トランジスタに応用可能
開発したMTJ素子の磁気抵抗変化率の印加磁界依存性(磁気抵抗曲線)は,磁界を正から負にスイープさせたときと,負から正にスイープさせたときの磁化がジャンプ(急峻に変化)する磁界の差が小さい。この結果,少ないエネルギー消費で大きな出力変化をえることが可能という。これを利用すれば,抵抗値の“high”と“low”を情報の“1”と“0”に対応させて不揮発性の磁気メモリーとして利用できる。さらに,外部磁界に対する抵抗値の変化そのものを出力すれば,感度の高い磁気センサーとしても使えるという。
加えて,開発したMTJ素子の中間電極は外部の電極から電気的に浮いている(ショートしていない)。このため,この素子の外部にゲート電極を設ければ3端子素子として応用できる。外部電界により素子の抵抗を制御できれば,トランジスタとして動作させることも可能という。以上から,この素子単体で不揮発性記憶素子(メモリー)と演算(ロジック)機能の両特性を持つ不揮発性集積回路を実現できるとした。
なお,本研究成果は応用物理学会の論文誌「Applied Physics Express」の2009年7月17日付けオンライン版に公開された。素子の作製に当たってはアルバックの協力を得たという。


















