図1 携帯型のコグニティブ無線ルータ「Personal Wireless Router」を開発
図1 携帯型のコグニティブ無線ルータ「Personal Wireless Router」を開発
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図2 電波の受信状況などに応じて,携帯電話網と公衆無線LANを自動で切り替える機能を持つ
図2 電波の受信状況などに応じて,携帯電話網と公衆無線LANを自動で切り替える機能を持つ
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図3 新しい移動体通信規格や無線LAN規格の普及に合わせて,対応する通信規格を増やしていく
図3 新しい移動体通信規格や無線LAN規格の普及に合わせて,対応する通信規格を増やしていく
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 エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム(以下,NTTBP)は2009年7月15日,コグニティブ無線ルータ「Personal Wireless Router」(以下,PWR)を開発したと発表した(図1発表資料)。携帯型メディア・プレーヤーや携帯型ゲーム機,ノート・パソコンなどの機器を無線LAN経由でインターネットに接続するための機器で,WAN側は3G携帯電話網や公衆無線LANサービスを利用する(図2)。

 WAN側はW-CDMA,HSDPA,EDGE,GPRSの移動体通信規格と,IEEE802.11a,同b,同gの無線LAN規格に対応する。LAN側はIEEE802.11bおよび同gに対応する。携帯電話網への接続に必要なSIMカードは筐体内に収納する。充電用のクレードルにはEthernet端子を備えており,宅内の無線LANアクセス・ポイントと兼用することも可能である。

 PWRには,WAN側の通信方式の中で最適なものを選択して切り替えるアルゴリズムを実装した。具体的には,それぞれの無線通信サービスの基地局が発する電波の電界強度を観測し,通信が途切れない範囲で最も速い通信サービスに切り替えるという。例えば3G網で通信しているときに公衆無線LANサービスの利用エリアに入った場合には,公衆無線LANサービスの認証処理を終えるまでは3G網での通信を続け,認証が済んでから公衆無線LANに切り替えるといった制御を行う。

1回の充電で6時間の連続通信を目指す

 NTTBPは持ち運びを容易にするために,PWRの大きさを「名刺入れ程度」(NTTBP 代表取締役社長の小林忠男氏)に抑えた。外形寸法は60mm×95mm×17.4mm,重さは約120gである。また,2009年末に予定する商用化の時点までに,1回の充電で連続通信時間を6時間,連続待ち受け時間を20時間にすることを目標とする。例えば待ち受け時の消費電力を減らすためには,LAN側の機器からの接続要求が届くまで待機状態にするといった工夫を施す計画である。携帯電話網や機器の進化に合わせて,LTEなどの移動体通信規格や,IEEE802.11nなどの無線LAN規格への対応も進めていく(図3)。

 商用化時の事業形態は未定とする。PWRをNTTBPが販売するのか,利用料金は幾らか,SIMロックを解除した状態で提供するのか,現状のハードウエアのままで提供するのか,といった点についてはいずれも決まっていない。そこで,PWRの機能や仕様に対するユーザーの要望の収集,無線LAN対応機器とPWRの連携利用シーンの確認などを目的としたフィールド・トライアルを行う。トライアルの実施期間は2009年8月下旬~10月31日。500人のモニターを募集し,PWRを無償貸与する。このトライアルでは,3G携帯電話網としてNTTドコモのFOMAサービス,公衆無線LANサービスとしてNTT東西の「フレッツ・スポット」を利用する。NTT東西のインターネット接続サービス「フレッツ光ネクスト」「Bフレッツ」の加入者であることがモニターの応募条件となっている。