富士通マイクロエレクトロニクスは,SystemCのTLM(transaction level modeling)2.0をLSIのハードウェア-ソフトウェア協調検証に適用した効果を発表した。この発表は,7月10日に新横浜で開催の「SystemC Japan 2009」(コーウェア,メンター・グラフィックス・ジャパン,フォルテ・デザイン・システムズ主催)で行われた。
日本では「SystemC」と言えば,動作合成ツールへの入力言語としての注目度が高いが,ワールド・ワイドでは検証効率化の手段として重視している場合が多い。特にRTL(register transfer level)よりも抽象度が高いTLMでハードウェアをモデリングして,ハード-ソフト協調検証の実用度を上げることが注目されている。その実例を示したのが,今回の富士通マイクロの講演である。
登壇したのは,同社の中村和正氏(共通技術本部設計技術統括部第一設計プロジェクト課長)である。同氏はSystemCのTLM2.0を利用したハード-ソフト協調検証の適用例を2件紹介している。
最初の1件は,同社が2009年3月に発売した自動車向けグラフィックス・ディスプレイ・コントローラLSI「MB86298」である(Tech-On!関連記事1)。協調検証によってソフトウェアの早期開発着手が可能になった。もう1件は,ある顧客向けのASICという。こちらでは,協調検証によって,システム・レベルの性能解析と消費電力解析が可能になった。
富士通マイクロ(当時は富士通)は,ASICなどの顧客に向けて,今回の協調検証技術をベースにした,組み込みソフトウェアの検証環境構築サービス「Cedar-ESL」を2007年5月に発表している(Tech-On!関連記事2,同3,同4)。中村氏によれば,今回の協調検証技術は,社内およびCedar-ESLを通して複数の設計に適用されており,その一部について今回のSystemC Japan 2009で発表したという。