交流の磁場を発生させ,制御する装置
交流の磁場を発生させ,制御する装置
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小型磁石とヒレを組み合わせたマイクロマシンを取り付けたカプセル内視鏡
小型磁石とヒレを組み合わせたマイクロマシンを取り付けたカプセル内視鏡
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イヌで実施した生体実験の様子
イヌで実施した生体実験の様子
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カプセル内視鏡で撮影した止血用クリップの様子
カプセル内視鏡で撮影した止血用クリップの様子
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 龍谷大学と大阪医科大学は,カプセル内視鏡を生体の外部から自在に動かすための駆動装置を開発した。この装置を利用した生体実験にも成功したという。

 開発した駆動装置は,大きく二つ。(1)交流の磁場を発生させ,それを制御する装置,(2)小型磁石と“ヒレ”を組み合わせたマイクロマシン,である。(1)の装置で発生させた交流の磁場の中に,(2)のマイクロマシンを入れると,磁石が振動してヒレを動かし,魚が泳ぐように進むという。(1)の装置の交流波形を変化させることで,(2)のマイクロマシンの動く速さや方向を自在に変えることができる。

 (2)のマイクロマシンをカプセル内視鏡に取り付けることで,外部から自在に動かせるカプセル内視鏡が実現する。生体実験では,イスラエルGiven Imaging Ltd.製の小腸用カプセル内視鏡を利用したが,マイクロマシンをカプセルに装着するソケットの大きさを変えるだけで,あらゆるカプセル内視鏡に対応できるとする。

 Given Imaging社の小腸用カプセル内視鏡の大きさは,外径11mm,長さ26mm。これにマイクロマシンを装着することで,生体実験に用いたカプセル内視鏡の大きさは,外径14mm,長さ48mmになったという。このカプセル内視鏡を胃内で動かす場合は,あらかじめ水を飲み,水の中を泳がせる。

 生体実験は,イヌで実施した。この実験によって,大きく以下の3点を確認できたという。

1)装置から与える磁場が,カメラの撮影や画像の送受信に悪影響を及ぼさず,撮影画像が体外のモニターに乱れることなく表示されること

2)カプセル内視鏡が動く速さや方向を,外部から自在に遠隔操作できること

3)あらかじめ胃内に取り付けておいた四つの止血用クリップを,カプセル内視鏡が見つけ出して撮影できること

 カプセル内視鏡は,既に2001年から実用化が始まっており,国内でも2007年4月にGiven Imagingの小腸用カプセル内視鏡が厚生労働省の薬事承認を取得,2008年9月にはオリンパスメディカルシステムズの製品も承認を得た。しかし,現在実用化されているカプセル内視鏡は,外部からの操作はできず,蠕動運動(動物の消化器官などにおいて,筋肉の収縮によって管内の物質をある一定の方向に進める運動のこと)によって器官内を進む。このため,外部からの自在な操作を可能にすることは,今後のカプセル内視鏡の進化の方向の一つとして注目が集まっている。

■関連記事:日経エレクトロニクス2008年12月29日号の解説記事「電子技術が拓くカプセル内視鏡の進化