新方式の基本的な考え方(デジコン委 第56回会合で配布された報告書の骨子案から)
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新方式導入の具体的なプロセス(デジコン委 第56回会合で配布された報告書の骨子案から)
新方式導入の具体的なプロセス(デジコン委 第56回会合で配布された報告書の骨子案から)
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新方式におけるライセンス発行・管理機関の全体相関図(デジコン委 第56回会合で配布された報告書の骨子案から)
新方式におけるライセンス発行・管理機関の全体相関図(デジコン委 第56回会合で配布された報告書の骨子案から)
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 2009年7月2日,「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」の第56回会合が開かれた。同委は総務大臣の諮問機関である情報通信審議会の下部組織で,地デジの普及推進の立場から,地デジのコンテンツ保護方式の改善,いわゆる「B-CAS見直し」に取り組んでいる。

 今回の会合では7月中に提出予定の今期の報告書に向けて,骨子案が示された。検討中の地デジの新しいコンテンツ保護方式の導入時期については,最初のステップである「技術方式・運用規定の策定」と「ライセンス発行・管理機関の設置」に関して「2009年内に完了」という日程を明示する方針を示した。だが,肝心の運用開始時期については,地デジに完全移行する「2011年7月24日」までの「可能な限り早期」と述べるに留まることになった。

 2009年6月23日に行われた同委の前回の会合で,新方式実施の具体的な日程目標が示されない点について,強い批判が何人かの委員から出ていた。そのため今回の会合で,新方式の導入日程が明確になることが期待されていた。この件に関して,テレビ朝日の福田俊男氏は,新方式の導入に際して放送機材の改修が必要になることを改めて説明し,「時間とコストの両方とも課題になる。(早期導入は)各局に新たな負担を強いることになる。恥ずかしながら一部には反発も予想される」と,新方式の早期導入に関して放送事業者がまとまり切れていない内情を明かした。

 地デジの新しいコンテンツ保護方式に関しては,前回の会合で,技術的な要件や導入手順についておおむねの計画が示されている。「技術開示方式」と呼ばれる新方式は,地デジ放送波のスクランブルの解除に必要な「暗号鍵」を,ソフトウエアあるいはICチップの形で機器に組み込む。B-CAS方式と併用する形で導入されるが,ICカードで暗号鍵を供給する現行のB-CAS方式に比べると,コストが低く,実装が容易になるため,地デジ受信機の商品企画が多様化すると期待されている。なお,ライセンス発行・管理機関に関しては透明性の高い非営利の法人(公益法人など)に委ねる方針。できるだけ早く運用可能にするために,新規に組織を立ち上げるのではなく,既存の公益法人に業務を委託するというアイデアも出ている。

 新方式は,2006年から2007年に掛けて検討され,結局導入が見送られた「新RMP方式」の仕様を参考に,機能を簡略化する形で策定されるもようだ。今回の会合ではそれを示唆する「既にある『技術的蓄積』を利用する」といった発言が主査の慶応義塾大学 教授の村井純氏や福田氏などからあった。また新方式の仕様をARIB(電波産業会),運用規定はDpa(デジタル放送推進協会)が,それぞれ策定を担当することも明らかにされている。