Saltlux社が運営するサービスに関する画面。左の画面は,ユーザーに配偶者の誕生日を知らせ,誕生日関連のサービスを推奨している様子。右の画面は,配偶者が好んでいるとシステムが推定したレストランの情報である
Saltlux社が運営するサービスに関する画面。左の画面は,ユーザーに配偶者の誕生日を知らせ,誕生日関連のサービスを推奨している様子。右の画面は,配偶者が好んでいるとシステムが推定したレストランの情報である
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Saltlux社のシステムの概要
Saltlux社のシステムの概要
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試験システムのアプリケーション画面の様子
試験システムのアプリケーション画面の様子
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 「私は今まで携帯電話機の検索エンジンのユーザー・インターフェース(UI)において,満足できるレベルのものを見たことがない」――。2009年6月14日~18日に米サンノゼ市で開催されたセマンティック関連技術のイベント「2009 Semantic Technology Conference」のパネル討論会において,米Google Inc.,Director of ResearchのPeter Norvig氏は,携帯端末向けの検索エンジンのUIに対して強烈な不満を表明した。携帯電話機のUIは,処理能力の向上に伴って進化しつつあるものの,まだまだ扱いにくい点が多いことを指摘したものだ。

 業界全体でこうした点への問題意識が高まる中,今回のイベントでは,あるベンチャー企業の技術に注目が集まった。韓国Saltlux Inc.(同社の日本語版のWebサイト)という会社の技術では,さまさまなデータを基に,その「意味するもの」を大まかに把握できるセマンティック技術を利用する。こうした技術を使うことで同社は「携帯電話機のユーザー体験を向上できる」と意気込む。

 同社が開発したシステムは例えば,携帯電話機のユーザーに対して,家族の誰かの誕生日を思い出させたり,もし誕生日が近いことがわかれば,近隣のレストランに予約をするための画面が,複雑な操作なしに表示される,といったことが可能になるという。こうしたサービスを実現するためSaltlux社は,携帯電話事業者が所有する,ユーザーの通話関連情報「Call Detail Record(CDR)」や,ユーザー・プロファイルなどの情報を利用する。Saltluxはこれらの情報を基に,ユーザーの好みに合致するであろうサービスを推奨したりする。同社のシステムは,IP Multimedia Subsystem(IMS)対応のシステム上で提供することを前提としている。

 例えば,ユーザーが携帯電話機で頻繁に連絡を取っている人物で,かつユーザーの近隣地域に住んでいて,さらにユーザーと年齢が比較的近い場合には,その人物を「ユーザーの配偶者である」と推定する。仮に,システムが「ユーザーの配偶者である」と推定した人物が,が頻繁にイタリア料理店に電話をしていたら,「ユーザーの配偶者は,イタリア料理が好みである」という推定を立てる。こうした事前の推定情報を基に,ユーザーに対して,配偶者の誕生日が近づくと,近隣のイタリア料理点の予約を推奨するといったことを行うという。

 こうした機能には,ユーザーのプライバシー管理の問題が発生する。Saltlux社はユーザーのプライバシーを守るため,自社でユーザーの個人情報を管理し,携帯電話事業者や他の企業と共有しないようにしていると主張している。

 同イベントでSaltlux社は,韓国のKT社が現在運営中の,セマンティック技術を利用した上記の機能を含むシステムを紹介した。「携帯電話事業者がユーザーに向けた多数のサービスを運営している。しかし,多くの事業者は,こうしたサービスの存在をユーザーに知らせることに苦労している」(Saltlux社,President/CEOのTony Lee氏)という。Saltlux社は現在,このサービスを100人程度を対象とした実証実験を進めているという。