(左から)京都大学 特任教授である小久見善八氏,NEDO 燃料電池・水素技術開発部 蓄電技術開発室 室長の弓取修二氏,NEDO 理事の和坂貞雄氏
(左から)京都大学 特任教授である小久見善八氏,NEDO 燃料電池・水素技術開発部 蓄電技術開発室 室長の弓取修二氏,NEDO 理事の和坂貞雄氏
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プロジェクトの目標
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プロジェクトの概要
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研究体制
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 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は,2009年度から開始する同機構のプロジェクト「革新型蓄電池先端科学基礎研究事業」の共同研究先として,京都大学を中心とするコンソーシアムを選定したと発表した(発表資料)。同事業では,電気自動車などに向けて2030年以前の早期実用化を念頭に,現行の技術水準の3倍以上のエネルギー密度を備える蓄電池の開発を目指す。プロジェクト期間は7年間で,総額210億円の予算を投じる計画。今回選定されたコンソーシアムには,京都大学のほか6大学,3つの研究機関,12企業が参加する。参加企業には,トヨタ自動車や日産自動車,本田技術研究所などの自動車大手のほか,三洋電機やジーエス・ユアサ コーポレーションなどの電池メーカーを含む。京都大学内に研究拠点を設置し,各企業などから50人以上の研究者を派遣して共同研究を実施する。

 NEDO 燃料電池・水素技術開発部 蓄電技術開発室 室長の弓取修二氏は,「米国が2015年までにハイブリッド車を100万台導入する目標を掲げたり,フランスやドイツで蓄電池の本格的な研究が始まったり,中国BYD Auto社が独自の電気自動車を発表したりと,電池を取り巻く環境は激変している。現在,日本には非常に高い水準で蓄電池技術が集積しているが,日本の優位性を圧倒的に広げ,競争力を強化するためにも,開発者が一致団結して優れた蓄電池を開発する必要がある」と述べた。また,「今回のプロジェクトの最終目標は,現行水準の3倍のエネルギー密度の蓄電池の開発だが,この目標は現行水準の5倍以上の蓄電池の開発に向けたマイルストーンと考えている」とした。

 具体的には,Liイオン2次電池の性能向上と,Liイオン2次電池をしのぐ性能を備える新たな蓄電池の開発に取り組む。「SPring-8」や「J-PARC」などの装置を利用し,電池の高度分析・解析技術を開発して,電池の基礎的な反応原理やメカニズムを解明することで,電池材料や新たな系の蓄電池の開発につなげるという。プロジェクトが終了する7年後には,「少なくともコインセル程度の大きさの電池を開発し,実際に充放電させて動作確認する段階まで持っていきたい」(弓取氏)とした。

 プロジェクト・リーダーには,京都大学 特任教授である小久見善八氏が就く。参加企業や研究機関は,「高度解析技術」「電池反応解析」「材料革新」「革新電池」の4グループに分かれて研究する。4グループの上には,NEDOの職員で構成するマネジメント・チームを設置する。このマネジメント・チームは,研究開発の現場に常駐し,研究の進捗管理や関連技術開発の動向調査,参加企業の利害調整などを行う。マネジメント・チームがここまで研究者と一体的に動く仕組みはNEDO内でも例がなく,従来にないきめ細かな管理体制で,研究を強力に推進するという。

 なお,今回の共同研究に参加するメンバーは以下の通り。
・京都大学
・東北大学
・東京工業大学
・早稲田大学
・九州大学
・立命館大学
・産業技術総合研究所
・ファインセラミックスセンター(再委託:静岡大学)
・高エネルギー加速器研究機構
・三洋電機
・ジーエス・ユアサ コーポレーション
・新神戸電機
・トヨタ自動車
・豊田中央研究所
・日産自動車
・パナソニック
・日立製作所
・日立マクセル
・本田技術研究所
・三菱自動車工業
・三菱重工業