Lumus社の3D映像対応HMD。映像を伝送するケーブルなどは外している。
Lumus社の3D映像対応HMD。映像を伝送するケーブルなどは外している。
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Fraunhofer IPMSが開発した,小型有機ELディスプレイ兼CMOSセンサ。
Fraunhofer IPMSが開発した,小型有機ELディスプレイ兼CMOSセンサ。
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この有機ELディスプレイを利用したHMDを装着したところ。
この有機ELディスプレイを利用したHMDを装着したところ。
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 今回のSIDでは,「Augmented Reality(AR:拡張現実)」への応用を想定したヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)を2社が出展した。ARは現実の情報にコンピュータ経由の情報を組み合わせることで,人間の認識力を強化するもの。このうち1社はイスラエルLumus Ltd.,もう1社はドイツFraunhofer Institute for Photonic Microsystems(IPMS)である。2社とも,透明なスクリーンに映像を投影し,目の前の映像とコンピュータ経由の画像を同時に見られるようにしている。

 Lumus社が出展したのは,コンパクトなメガネ型にまとめ,3D映像が見られるようにしたHMD。ただし,映像は別のパソコンなどからケーブル経由で送る。メガネの中に実装したLCOSの映像をプリズムや導光板などの光学系を通して目に映し出す。

 映像のフォーカスは,目とメガネの位置関係によらず一定している。GPS機能や加速度センサ機能はまだないが,搭載可能という。「街中で見ている方向の店の情報などを映し出したり,ビルの名前を出すといったナビゲーション情報を表示したりといった使い方を想定している。日本はそうしたARへの理解が進んでいると聞いている」(同社 Chairman&CEOのZvi Lapidot氏)。「価格は数百米ドルを想定しているが,もう少し小型化,軽量化してから市場に出したい」(同社)。

映像の表示と撮影を同時に実行

 一方,Fraunhofer IPMSは,CMOSセンサの上に有機ELディスプレイを重ねた素子を開発し,それを用いたHMDを試作した。CMOSセンサは0.13μm世代で技術で製造したものである。

 超小型の有機ELディスプレイは,ロームが以前から開発しているが,Fraunhofer IPMSは映像を表示すると同時に,外部の映像を撮影できるようにした。その第一の目的は,目の視線方向のトラッキングで,これにより,目が見ている方向に合わせた映像を表示することができるという。

 ただし,現時点のHMDはかなり大掛かりなもの。加えて,有機ELディスプレイは緑色のモノクロ表示しかできない。一方,CMOSセンサとしての機能は,赤いレーザ光を用いたデモしか見せていない。ディスプレイをカラー化した場合などに,その映像がCMOSセンサへの雑音にならないかという質問に対して,Fraunhofer IPMSは明確には回答しなかった。