2009年5月22日付けで,Blu-ray Disc録画機とその記録媒体を,私的録音録画補償金制度の対象に加えるように著作権法施行令の一部を改正する政令,いわゆる「Blu-ray課金」が施行された。これにあたり文化庁は,次長の高塩至氏の名前で関係各団体に施行通知「著作権法施行令等の一部改正について(通知)」を配布した。

 この施行通知の中で文化庁は,今回のBlu-ray課金に向けた政令改正の内容と留意事項について説明している。留意事項では今回の政令改正が2008年6月17日に公表された文部科学大臣と経済産業大臣のいわゆる「大臣合意」(施行通知では「両省合意」と記載)に基づくという経緯を説明した上で,今後「政令の見直しを含む必要な措置を適切に講ずる」条件として,以下の二つを列記した。
 1.アナログチューナーを搭載していないレコーダー等が出荷される場合
 2.アナログ放送が終了する平成23(2011)年7月24日以降
その理由は,この二つの条件のどちらかが実現した場合に,「関係者の意見の相違が顕在化し,私的録画補償金の支払いの請求及びその受領に関する製造業者等の協力が十分に得られなくなるおそれがある」からである。また,大臣合意の当事者である文化庁と経済産業省は,このような「現行の補償金制度が有する課題を十分に認識している」としている。

 文化庁は当初,2009年4月1日のBlu-ray課金の実施を目指していた。実施が5月22日まで遅れたのは,録画補償金制度を支える当事者の一つである機器メーカーの反対があったからだ。

 機器メーカーの業界団体である電子情報技術産業協会(JEITA)は2009年2月13日に,文化庁が2009年2月2日付で提示したBlu-ray課金に向けた政令原案に向けたパブリック・コメントを公表し,
 1.無料デジタル放送の録画は補償金の対象から明確に外す
 2.遅くともアナログ・テレビ放送が停波する2011年7月24日までの暫定的な措置とするために失効規定などを追加する
 3.Blu-ray Discを技術的に正確に定義するために,「レーザーの波長405nmとレンズ開口数0.85」という条件を追加する
という三つの要望を明らかにした。


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 文化庁は今回基本的に,2月2日に提示した原案通り,著作権法施行令を改正している。ただし,JEITAの要望のうち,3の技術的定義の追加のために,本体ではなく著作権法施行規則の一部を改正する省令を出している(省令改正案のPDF)。また,2の見直し規定については,上記のように施行通知に記載した。なお,1については,具体的な判断を避け,「関係者の意見の相違」と「現行の補償金制度が有する課題」を,文化庁と経産省が認識しているという事実を施行通知に記載するだけに留めた。


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