米Gracenote, Inc. Senior VP & CTO Dale “Ty” Roberts氏(写真=林 幸一郎)
米Gracenote, Inc. Senior VP & CTO Dale “Ty” Roberts氏(写真=林 幸一郎)
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Gracenote社が提供する動画解析サービスの例。ユーザーが制作した「Star Wars」関連の動画を解析している。音声は3秒,動画なら4.5秒ごとに,出所を明らかにできる。
Gracenote社が提供する動画解析サービスの例。ユーザーが制作した「Star Wars」関連の動画を解析している。音声は3秒,動画なら4.5秒ごとに,出所を明らかにできる。
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音楽CDのタイトル情報などの「メタデータ」を提供するサービス「CDDB」で知られる米Gracenote社が次に目論むのは,動画向けサービスである。同社の技術面を統括するDale “Ty” Roberts氏に話を聞いた。(聞き手=Phil Keys,日経エレクトロニクス)

――動画対応の電子指紋技術の現状について教えて下さい。

 コンテンツ同定や電子指紋技術は今のところ,主に海賊版防止のためのものと世間で見なされている。だが,海賊版防止のため,著作権違反物を削除するいわゆる「フィルタリング」は我々のビジネスではない。ビデオ業界でどうなのかは知らないが,少なくとも音楽産業でフィルタリングがうまくいっているとは言えない。我々が狙っているのは正当な権利者に利用料を支払うための利用である。

 我々の解析サービスは,音声を3秒,動画を4.5秒ごとに解析して,動画に含まれる細切れの動画や音楽の出所を瞬時にリストアップできる。こうしたサービスは今のところ,動画共有サイトやテレビ局などで動画に含まれる本来の権利者を捜し,利用料を支払うために使われている。あるテレビ局はこれを,インターネットに番組動画を流す前に,BGMなどの権利関係を確認する用途に使っている。

――そうしたサービスが電子指紋技術の主な用途になるのでしょうか

 電子指紋技術は既に,エンド・ユーザーがもっと便利に使える段階にある。私はこの技術を,不正コピーの発見や利用料を決めるためだけに使うのは,もったいなさ過ぎると思う。電子指紋のデータを使えば,動画そのものを検索キーにして,一見関係ない別々のコンテンツから共通項を見つけ出して結びつけられるからだ。

 我々はテレビのすべてがインターネットに載るような時代に向けて,ユーザーが欲しい動画をいつでもすぐに見つけられるようにするためのサービスを提供したいと思っている。電子指紋技術はその鍵となると思っている。

――そうした市場を狙っている企業は他にもありそうです。例えば,米Macrovision Corp.の動きをどう見ていますか。同社は2007年以降,次々と企業買収を進め,つい最近は,Gracenote社にCDのジャケット写真などの音楽メタデータを提供している米Muze, Inc.の資産を購入しました(Tech-On!関連記事)。

 我々はジャケット画像などのデータ提供について,Muze社と長期契約を結んでいるし,今でもその契約は生きている。確かに,データを入れ替えるのはコストがかかるが,さほど大きな額ではないと分かっている。もし何か問題が出たら入れ替ればいいだけだと思う。

 Macrovision社のビジネスで成功しているのは今のところ,電子番組表(EPG)関連だけではないだろうか。電子番組表は動きが少ない業界だ。標準規格のユーザー・インタフェースを使うから,イノベーションも少ないんだ。

 イノベーションはインターネットで起こっていると思う。だから我々はインターネットで使える製品に注力している。インターネットでの競争は,ケーブルテレビ業者に製品を納入するのと異なる。Macrovision社が競争に耐える製品を作れるかどうかは疑問だ。

(さらに詳細なインタビューを日経エレクトロニクス 6月1日号に掲載する予定です)


▼お知らせ
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――通信×放送×デジタル家電の連携が生み出す未来


米Gracenote社の日本法人であるグレースノート 代表取締役 社長の小玉 章文 氏が動画向け電子指紋技術のデモを交えつつ,その現状と将来を,2009年5月25日(月)-26日(火)開催の日経エレクトロニクス主催セミナーで講演します
詳細)。