富士通が開発した,1000台規模の通信が可能で,障害発生時などにも自動的に他の通信経路に迂回して修復・維持できるアドホック通信技術
富士通が開発した,1000台規模の通信が可能で,障害発生時などにも自動的に他の通信経路に迂回して修復・維持できるアドホック通信技術
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 富士通は,通信機器同士がネットワークを構築するアドホック通信において,1000台規模の通信が可能で,障害発生時などに個々の機器が自動的に他の通信経路に迂回して修復・維持できる技術を開発した(発表資料)。従来,実用水準では通信機器50台程度が限界だったという。センサ・ネットワークなどに向ける。

 アドホック通信とは,通信機器同士が1対1で通信するアドホック・モードでの通信を利用しながら,いわゆる「バケツリレー」式にデータを伝送することでネットワークを構築する技術。通信経路を自動的に発見してネットワークを形成するため,ネットワークの運用が容易である。しかし通信機器が増えると,経路を発見するための制御パケットが増大して帯域を圧迫するため,従来の技術ではネットワークの規模を大きくできなかったという。

 今回,制御パケットの発生を大幅に削減するアルゴリズムを開発した。個々の通信機器が隣接する機器との通信品質や死活状態を監視して,品質の高い通信相手を選択する。このとき,個々の通信機器が最適な経路を学習し,状況に応じて品質の安定した経路に切り替えるようにした。これにより,通信機器などの障害発生時や,ネットワークのトラフィック増大時などに,個々の機器が自動的に他の通信経路を選択して,通信を修復・維持することが可能になったとする。

 開発したアルゴリズムは,有線式と無線式のいずれにも適用できる。機器の追加や障害の発生,通信状態の変化などにも柔軟に対応できるとする。通信品質を安定させたまま1000台規模のネットワークを構成できるのに加えて,ゲートウェイを増設することでさらなる拡張も可能。

 同社は今後,2009年10月開設予定の「富士通館林データセンター」新棟において,開発した技術を利用して1万台のセンサで構成するセンサ・ネットワークの実証実験を行う。2010年度に同社のネットワーク機器や製品への搭載を目指す。また2009年度下期からセンサ・メーカーなどに向けて,評価キットなどの開発ツールを提供する。さらに,開発した技術の普及を目指して,標準化団体への提案も行っていく予定という。