取締役社長兼CEOのCarlos Ghosn氏
取締役社長兼CEOのCarlos Ghosn氏
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 日産自動車は2008年度(2008年4月~2009年3月)の決算を発表した。売上高は前年度比22.1%減の8兆4369億7400万円,営業損失が1379億2100万円,純損失が2337億900万円となった。世界不況に伴う自動車の販売台数減と車種構成の低価格化が,営業損益に5000億円を超える悪影響を与えた。

 自動車の販売台数は全世界合計で前年度比9.5%減の341万1000台となり,同社推定の世界市場シェアは5.5%と前年度並みを維持した。国内の販売台数は同15.1%減の61万2000台で,国内市場シェアは前年度の13.6%から13.0%へ低下した。北米は同16.2%減の113万3000台だったが,米国での市場シェアは前年度から0.5ポイント拡大して7.2%となった。欧州は同16.7%減の53万台。中国などその他の海外市場では同7.1%増の113万6000台と唯一,販売台数を伸ばした。

国内生産は100万台を維持

 2009年度の業績予想は,売上高が前年度比17.6%減の6兆9500億円,営業損失1000億円,純損失1700億円とする。自動車の世界市場規模が前年度比13%減の5400万台,為替が1米ドル=95円,1ユーロ=125円の前提で予測した。黒字化の時期については「市況にもよるが,需要が回復しない,円高も続くという最悪の前提でも,2010年度末には黒字化する」(取締役社長兼CEOのCarlos Ghosn氏)。

 自動車の販売計画は全世界で年間308万台(前年度比9.7%減)とした。世界市場シェアは過去最高の5.7%になる見込み。生産台数は前年度比4.3%減の295万台を計画している。2009年度上期は2008年度下期に対して10%以上増産する予定で,休業日数も減らすという。国内生産台数は前年度と同等の100万台を維持する。「当社の土台は日本にある。ただし,円高が進めば海外生産比率を高めるのは当然の施策。部品/アクセサリの海外調達量を増やすなど,為替の状況次第で手は打つ」(Ghosn氏)。

2009年度は固定費2000億円カット

 記者会見で同社は収益改善策の進捗を報告した。2008年度第4四半期(2009年1月~3月)は生産台数を前年同期の1/2まで減らし,在庫調整を徹底したという。2009年3月末の在庫台数(販売会社分を含む)は47万台と,前年同月より13万台少ない水準にとどめた。

 2009年度は固定費の削減や設備投資の縮小,製造コストの低減を通じて赤字縮小を目指す。固定費は前年度比で2000億円以上の削減を計画している。日本や米国,欧州といった人件費の高い地域で労務費を前年度から2割削減する。具体策としては,新規採用を最小限に抑える,時間外勤務の削減,出張費の75%削減,休業日の実施などを予定している。設備投資は前年度比9%減の3500億円とし,1/2を新車関連に振り向ける。

 製造コスト削減に向けては,部品の種類を1/2にして部品当たりの調達量を2倍にする,コスト競争力のある地域からの調達量を増やす,新車の研究開発の初期段階から多くの部品群でコスト削減を検討する,といった施策を進める。

 研究開発費も前年度比12%減の4000億円を予定している。同社が「先行技術開発費」と位置づける投資額のうち多くを環境配慮技術に充てるなど,メリハリをつける考え。先行技術開発費のうち環境関連向けの割合は2008年度実績で54%だったが,2009年度は70%へ拡大するという。

 なお,同社は電気自動車の生産体制について,2010年秋に追浜工場において5万台/年の規模で量産を立ち上げると発表した(Tech-On!関連記事)。