Rose氏は,およそ1年前からHDTVコンテンツの提供に向けた検討作業を開始したという。BBC HDチャンネルの画質担当者は,配信番組で「HD」対応を謳うからには,コンテンツは720p以上であるべきだと主張した。ほかの動画配信サービスでは800×600画素の動画を「HD」と呼ぶこともあるが,BBCの見解としては画面サイズが1280×720画素以上でないと「HD」とは呼べないという。

 このため,映像の高能率符号化方式として圧縮率の高い「H.264(MPEG-4 AVC)」を使っても3.2Mb/sのビットレートが必要になった。英国では3.2Mb/sのストリーミング配信を安定して受信できない利用者も多いことから,ダウンロード配信も必要と判断した。HDTV配信の検討が始まった1年前,ダウンロード配信に対応したプレーヤーソフト「iPlayer Desktop」は,Windowsにしか対応していなかった。そこでAdobe AIRベースのクロスプラットフォーム対応ダウンロードマネージャーを新たに開発し,WindowsだけでなくMac OSやLinuxでもダウンロード配信が利用できるようにした。これと平行して,H.264を使った配信に必要となる最新版のFlashプレーヤーの普及が進んだことと,BBC HDチャンネルからiPlayerに提供できるHDTVコンテンツの数が増えたことから,4月にiPlayerサービスをリニューアルしたという。

 また通常番組も高画質化するために,これまでH.264で800kb/sが最高だったSDTV映像の配信に,新しく832×468画素,1.5Mb/sの配信フォーマットを追加した。テレビ放送に近い画質で番組を視聴できるという。

 BBCは今後,機能追加のためのアップデートを数回行った後に,2009年の夏にさらに大幅なiPlayerのリニューアルを予定しているという。具体的にどういう機能が追加されるかは示されていないが,Webサイトのサービス改善を中心に「iPlayer 3.0」としてリリースする計画である。