出典:日経ニューメディア,2009年5月4日号,p13(記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

 英BBCは2009年4月20日に見逃し視聴サービス「iPlayer」をリニューアルし,多数の新機能を追加した。具体的には,番組の高画質化とHDTV配信の開始,回線速度を検知し最適なビットレートで符号化した映像を配信する機能,専用プレーヤーソフト「iPlayer Desktop」の全面改訂などが行われた。BBCでインターネットサービスを手がけるOnline Media Group代表のAnthony Rose氏は,開発者ブログで新機能について解説している。

 視聴者が自分の通信環境でできるだけ高画質にかつ滑らかに映像配信が楽しめるように,コンテンツの配信ビットレートよりも接続速度が遅い場合に自動的に低ビットレートの映像配信に切り替える「adaptive bitrate technology」機能を新たに搭載した。さらに,通信速度が改善するとビットレートの高い映像配信に自動的に切り替わる機能も今後追加する予定である

 新しく追加されたHDTV配信など高いビットレートの映像配信が利用者の通信環境で利用できるかどうか,利用者自身で診断できるWebサイトも新設した。一般的な速度測定サイトでは,Webサイトなどの閲覧に使われるHTTPプロトコルを使って通信速度を測定するが,BBCの速度測定サイトでは,実際にiPlayerで利用するRTMPストリーミングプロトコルで,BBCのサーバー間との通信速度を測定する。また,AkamaiやLevel3,Limelightの各コンテンツ・デリバリー・ネットワーク(CDN)を経由した通信速度も計測でき,iPlayerの視聴に即した接続傾向を把握できるという。

 さらにiPlayer Desktopでダウンロードした番組を,Windows Media Centerを使い家庭内で共有できるようにもなった。iPlayer Desktopで,Windows Media形式のファイルをMedia Centerのライブラリーにダウンロードするように設定するだけでよい。テレビに接続するMedia Center対応STBを利用すると,iPlayer Desktopでダウンロードした番組をテレビ視聴することもできる。

 今回リニューアルしたAdobe AIRベースのiPlayer Desktopでは,これまで利用していたピア・ツー・ピア(P2P)技術を用いた配信を取りやめた。Rose氏はP2Pの利用を中止した理由を説明していないが,2008年11月に日経ニューメディアがBBCのAndy Davy氏に行った取材では,(1)プロバイダー事業者への負担が大きいこと,(2)データの通信経路が複雑で,利用者が認知しないまま利用者回線が通信経路として使われる懸念があること――からP2Pによる配信を廃止する方針を明らかにしていた(日経ニューメディア2008年11月24日号のp.10に関連記事)。