図1 パイオニアは中期経営計画を発表した
図1 パイオニアは中期経営計画を発表した
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 パイオニアは2009年4月28日,2012年3月までの中期経営計画を発表した(Tech-On!関連記事)。主な内容はプラズマ・テレビ事業から撤退しカー・エレクトロニクス分野へ注力することや,9800人の人員削減である。同社 代表取締役社長の小谷進氏はこの経営計画を説明した後に,「ステーク・ホルダーの皆様には多大なる心配とご迷惑をおかけしている。今後は大きな痛みを伴うが,不退転の決意で臨んでいきたい。収益を確保するとともに,人に感動を与えられるパイオニアらしい製品を出していきたい」と述べた(図1)。以下は記者会見での主な一問一答である。

――カー・エレクトロニクス技術の開発において,三菱電機との協業や,ホンダを引受先とする25億円の第三者割当増資などを発表した。今後,これらのメーカーとどのように関係を深めていくのか

 三菱電機とは2002年よりカーナビのソフトウエア開発で協業していた。カーナビなどのソフトウエア開発量は年々増えている。協業によりソフト開発費を低減できるメリットもある。それをカーAV機器まで広げていく。

 ホンダとは既に大きなビジネスを展開している。今後,両社の関係を強化することで,カーナビ開発をさらに強化していきたい。具体的には,ホンダのテレマティクス・サービス「インターナビ・プレミアムクラブ」と,パイオニアの同様のサービス「スマートループ」を融合していくことなどだ。

 今後はさらに,トヨタ自動車などの自動車メーカーとの関係も強化していく。カー・エレクトロニクス分野における営業収入のうち,OEM(自動車メーカー)との取引きの割合を現在の約39%から段階的に上げていき,2012年度には約45%にする。

――カー・エレクトロニクス事業での構造改革の内容を教えて欲しい。

 生産や販売分野において,固定費の削減や原価低減を徹底的にやる。「世界初」をうたうパイオニアらしい製品開発だけでなく,値ごろ感のある製品を作るための他社との協業や,新興国を開拓するために必要な商品開発力を強化していきたい。現在の新興国ではカーCDや自動車向けDVDプレイヤーが受け入れられている。

――自動車業界の今後の見通しをどうみているのか

 現在は非常に厳しい。けれども,各国で政府による支援政策が進められており,売上げ規模が対前年比で上がる地域もある。たしかに足下は低調だが,ロシアを除くBRICsでは2012年までに市場規模が現在より約10%成長するとみている。

 現在のパイオニアのシェアについては,日本の市販市場ではカーナビやカーAVなどが主力で,金額ベースで約40%ある。北米ではカーCDやカースピーカーなどにより約40%。欧州では遅れを取っており約15%である。これらの地域におけるシェアを,2012年まで維持することに注力する。

これ以上の人員削減はない

――約1万人を削減するとのことだが,それでもグループ全体で3万4000人の社員を抱えている。事業規模を考えると多すぎないか

 今回の経営計画は,3万4000人の社員を前提に作ったものだ。仮に収益が下振れしたとしても,人を減らすつもりはない。この計画では,売上を増やして損益の改善を図るというよりも,固定費を削減することで改善を図ることを狙った。世の中の景気が改善しなくても,収益は確保できるはずだ。その上,いくつかの上振れが予想される要因が,今回の計画には入っていない。例えばシャープとの合弁会社設立や,三菱電機との協業,ホンダとの提携強化による効果だ。かなり「堅め」の計画とした。

――ホームエレクトロニクス事業分野の営業収入が大幅に減るが,これはプラズマ・テレビ事業からの撤退だけでは説明できない。ほかに理由があるのか

 シャープと光ディスク事業における合弁会社を設立する影響が大きい。

 ホームエレクトロニクス事業に関しては,DJ向け映像機器やセットトップ・ボックス(STB)は,この不況下にあっても堅調だ。これらについては,市場が回復し始めると共に,成長路線に戻したい。残るAV事業については,パイオニアには技術力やブランド力がある。プラズマ・テレビ事業撤退による資金を振り向けることで立て直す。

――2008年度の営業損失が550億円と,2009年2月の前回予想より140億円減るという上方修正の結果となったのはなぜか

 プラズマ・テレビ事業からの撤退により,(在庫分が)値崩れすると思っていたところ,値崩れしなかったからだ。

公的資金活用の検討も

――400億円の資本増強をするとのことだが,これは公的資金の活用を考えているということか

 公的資金の活用が前提というわけではないが,あらゆる可能性を考えながら検討している。

――将来的に他社と経営統合することはあり得るのか

 今のところ,一切考えていない。現在の運転資金については十分にある上,メインバンクである三菱東京UFJ銀行からは,資金面で支えると言ってもらっている。