質問に回答する近藤副社長
質問に回答する近藤副社長
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 ホンダは2009年4月28日,2008年度通期の連結決算を発表した(Tech-On!関連記事)。主な質疑応答は次の通り。ホンダの回答者は,代表取締役副社長の近藤広一氏である。

――2008年度通期の結果は想定よりも少し上振れしたが, 2008年度通期の感想と2009年度に対する手ごたえについて教えてほしい。

 2008年度の上半期は絶好調だったが,下半期は大変だった。増産,増産をかけたところに世界的な不況が来た。このギャップが大きかった。そのため,下半期は何とか世界情勢に合わせた事業規模に対応させるために構造改革を思い切ってやって来たという感じだ。

 2009年度通期では,100億円の営業利益を予想している。為替が1米ドル95円,1ユーロ125円で推移すれば,まあこれくらいの数字はいけるだろう。北米が回復基調になるのはまだまだ先になりそう。下支えしてくれるのが,中国,南米,アジアといった新興国市場になるだろう。ただし,新興国は世界的な経済変動を受けやすい地域であり,情勢を良く見た上での固めの数字を出している。

――米国の需要動向はどう推移しているのか。


 全体としては,底を打ったなあという感じだ。4月は3月と同じ水準だろう。ただ,底は打ったものの,ここからどうリバウンドしていくのかがまだ見えていない。懸念しているのは,ビッグ3の動向や豚インフルエンザがどのように影響するかだ。

 一方,好材料は中古車全体の在庫が減り,中古車の価格が戻ってきたこと。それからファイナンス面についても,多少ではあるが,1~2月の厳しさに比べて緩んだという気がしている。

 ホンダの全体での在庫は3月末で20万台強とまだまだ過剰な状態にある。米国では3月末で98日分の在庫があるが,7月末くらいには50日程度にする予定。米国の2008年1~12月の新車販売台数は1325万台だったが,2009年は1050万台程度とみている。7~8月までに在庫を適正化すれば,秋以降はメーカーから販売店への卸し台数が増えるはずだ。

――米国の落ち込みをどの地域で補うのか。

 ホンダは「米国依存度が高い」と言われているが,2輪車が底堅いうえ,中国,南米,アジアといった新興国の4輪車が堅調だ。新興国がネガティブに振れないように見守りたい。

――国内の環境対応車に対する減税対策やスクラップ・インセンティブといった景気対策での影響をどう見ているのか。

 減税対策による効果は既に織り込み済みで,国内でのホンダの新車販売台数を57万5000台と今期はみている。ただ,これには13年超の登録車の買い替えに対するスクラップ・インセンティブ対策による効果は含んでいない。同対策は2009年6月末までに施行されるとのこと。自動車工業会の調査によれば,対象車は69万5000台ほどあるという。この調査を基に想定すると7万~10万台は期待できるのではないかと思っている。ただ,詳しい調査を現在進めているところで,この数字はざっくりとしたものだ。

――パイオニアへの出資に対する狙いやメリットを教えてほしい。

 パイオニアに25億円の出資をすることを決定した(関連記事)。パイオニアからは,カーオーディオやカーナビを調達しており,特にカーナビでは当社の売りである「インターナビ」対応の高機能品を購入している。インターナビ対応のカーナビにはパイオニアが深く関わっており,ホンダの得意分野を強くすることと,パイオニアから出資の要請があったことから決定した。これ以上,パイオニアに追加投資するかは今のところ考えていない。

――ビッグ3の再生に向けた動きが大詰めを迎えているが,どんな影響がありそうか。

 ビッグ3の動向によっては米国の新車販売市場が冷え込むということがあるかもしれない。これ以外に直接的な影響としては,仮にビッグ3のいずれかが,「Chapter 11(日本でいう民事再生法に相当)」に陥った場合,ビッグ3系の部品メーカーとの取引が問題となる。対応を考えなければならない部品メーカーが,ホンダには数社ある。ただし,Chapter 11に陥ってもすぐに生産が中止になるわけではないので,差し迫ってアクションするほど緊急性があるものはない。時間をかけて継続的に話し合いを進めている。

――2009年度通期は上半期と下半期でどう推移するのか。

 自動車の新車販売台数は通期で321万台,そのうち上半期が156万台,下半期が165万台とみている。2輪車は通期で1400万台(完成車ベース),そのうち上半期が680万,下半期が720万台となるだろう。営業利益は上半期で1100億円の赤字,下半期で1200億円の黒字とみている。上半期の終わりまでに年間320万台の事業体制を構築する予定だ,

――設備投資費と研究開発費はどう減らしたのか。

 3年前に「2010年に450万台体制を作る」という中期目標を掲げ,これに沿って増産体制を進めてきたが,これがリーマン・ショックによって崩れた。2009年度は生産能力を増やす設備投資は思い切ってすべてカットした。研究開発費は,「NSX」のような車種の開発を中止したことや,F1に対する開発投資をなくしたことなどで減らしている。ただし,環境技術に対する研究開発には資源を集中していく。