三菱自動車工業は2008年度(2008年4月~2009年3月)決算を発表した。売上高は前年度比26.4%減の1兆9735億7200万円,営業利益は同96.4%減の39億2600万円だった。純損益は赤字に転落して548億8300万円となった。2008年秋から需要減退,円高,信用収縮と三重苦に見舞われたが,コスト削減を進め,かろうじて営業利益を確保した。

 自動車販売台数(小売ベース)は前年度比22%減の106万6000台だった。内訳は,国内が同23%減の16万8000台,北米は同26%減の11万9000台,欧州は同20%減の27万2000台,アジア・その他地域は同21%減の50万7000台。これまで好調だったロシア市場もルーブルの下落や関税率の引き上げの影響で下期に売り上げが落ち込んだという。

取締役社長の益子修氏
取締役社長の益子修氏

 2009年度の販売台数は全世界で前年度比13%減の93万2000台を見込む。北米と欧州ではそれぞれ22%減,アジア・その他地域では15%減と予測するが,日本では16%増の19万5000台を目指す。古い車の買い替えに政府が奨励金を与えるスクラップ・インセンティブの効果で1万5000台,エコカー減税の効果で9000台の上乗せを織り込んでいる。エコカー減税の対象となる車種は前倒しでの市場投入も検討しており,政府の景気対策の恩恵を最大限に享受する考え。日本以外で販売増を期待する市場としては「カナダやフィリピン,インドネシア,中国,ブラジル,ポーランドなど一部では2008年度の販売が前年実績を上回った。特に中国には期待したい。上海ショー(Auto Shanghai 2009)の会場を見てまわったが活気と熱気を感じた。当社にもチャンスがあるはず」(取締役社長の益子修氏)とした。

 2009年度の業績予想は,売上高1兆5000億円(前年度比24%減),営業利益300億円(同664%増),純利益50億円とし,最終損益の黒字化を狙う。益子社長は「市場回復のきざしはないが,2009年初めごろの『どこまで落ちるかわからない』という感覚はなくなった。そろそろ底が見えそうだ。米大手2社の問題が片付かないと精神的に落ち着かない感じはあるが(経営破たんが取り沙汰される)Chrysler LLCの問題がどう決着しても当社の事業に大きな影響はない」と市場見通しを語った。「第1四半期(4月~6月)は緩やかな生産調整を続けるが,夏休みの初めごろには生産を回復する」(常務取締役の市川秀氏)という。今後は鋼材価格の値下げ交渉や従業員の賃金カット,海外の開発機能を縮小して日本に集約する,といったコスト削減策を通じて2009年度の黒字化を目指す。

三菱自動車工業 本社
三菱自動車工業 本社
コスト削減の一環として決算会見を初めて本社会議室で開催した

 なお,同社は決算会見で電気自動車「iMiEV」の事業計画を紹介した。2009年度はフリート・モニタ(実証走行試験)向けを中心に1400台を販売する。「一般需要にも応えたいが,インフラが整わないうちはユーザーに不便な思いをさせてしまう。2009年度も一部は一般ユーザー向けに販売するが限定的なものになる」(益子氏)。生産台数は生産立ち上がりから1年間で2000台を予定している。この事業では今後,主に電池生産能力の拡大に資金を投じる。電池の生産能力は2009年度に2000台,2010年度に5000台,2011年度に1万5000台と引き上げていく計画。iMiEV事業は当初数年は赤字になる見込みだが「生産規模が年間3万台になれば黒字化も見えてくる。2013年ごろをメドに年間3万台に乗せたい。欧州向けに投入する左ハンドル車の需要がカギになる」(益子氏)とした。

iMiEVの市場投入計画
iMiEVの市場投入計画
三菱自動車の決算説明資料より