図1 2009年3月期の決算を発表するKDDI 代表取締役社長兼会長の小野寺正氏
図1 2009年3月期の決算を発表するKDDI 代表取締役社長兼会長の小野寺正氏
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図2 KDDIの連結決算
図2 KDDIの連結決算
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図3 移動体通信事業の決算
図3 移動体通信事業の決算
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図4 設備投資額の実績と予定
図4 設備投資額の実績と予定
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図5 固定通信事業の決算
図5 固定通信事業の決算
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 KDDIは2009年4月23日,2009年3月期(2008年4月~2009年3月)の決算を発表した(決算資料の掲載ページ図1)。売上高は前期比2.7%減の3兆4975億円,営業利益は前期比10.7%増の4432億円だった(図2)。減収の最大の要因は,移動体通信事業における端末販売台数の減少である。前期は1582万台だった端末販売台数は,販売方法の見直しなどの影響で1081万台に減った(前期比32%減)。端末販売台数が減少した代わりに販売手数料が1610億円減少し,それが営業利益を押し上げた。KDDI 代表取締役社長兼会長の小野寺正氏は,「主要な経営指標の一部に未達があったものの,概ね堅調だった」と評価した。

 移動通信事業は,端末販売台数減少などの影響により売上高が2兆7192億円と前期比で5.0%減少したが,営業利益は前期比10.2%増の5015億円だった(図3)。2009年3月末時点での携帯電話サービス「au」の累計契約数は3084万(前年比で約50万増加)で,通期のARPU(1契約当たりの月間売上高)は前期比7.3%減の5800円だった。

 移動通信事業における設備投資は,「2009年3月期がピークだった」(小野寺氏)。2009年3月期の設備投資額は4321億円で,そのうち2001億円が2012年の800MHz帯の再編に向けたもの,1066億円が2GHz帯に向けたものだった。2010年3月期は,基地局建設数がオープン局で1割,屋内局で2割程度増える見込みだが,基地局設備の単価低減などによって設備投資額を3970億円に抑える予定である(図4)。この説明会でKDDIは,2012年にLTE(long term evolution)を導入する計画であることと,現行の移動体通信方式である「CDMA2000 1x EV-DO Rev.A」のマルチキャリア版をLTE導入の前に採用する予定であることを明らかにした(Tech-On!の関連記事)。

 固定通信事業は,売上高が前期比18.1%増の8487億円で,営業損失が6.7%減の566億円だった(図5)。固定系アクセス・サービスの累計契約数が534万2000と前期比で約50万増加していることもあり,KDDIは「着実に改善している」(小野寺氏)とみる。2011年3月期における固定通信事業の黒字化を目指す中,まずはFTTHサービスの拡販を優先する方針であり,2010年3月期は赤字が継続する見込みだ。

 2010年3月期の見通しは,売上高が前期比0.5%減の3兆4800億円,営業利益が前期比6.0%増の4700億円である。携帯電話サービスのARPUや,端末販売台数は減少するものの,携帯電話サービスの累計契約数や固定系アクセス・サービスの累計契約数が増加すると見込む(表1)。営業利益4700億円の内訳は,移動通信事業が前期比1.7%増の5100億円,固定通信事業が400億円の赤字の見込みである。端末販売台数について小野寺氏は,「春モデルに良い端末を出せたし,夏にも良いものを出せそうだ。前期の第4四半期のように,拡販によってそれなりの台数を販売できることもわかった。1000万台というのはかなり厳しい数字だとみているが,なんとか達成したい」と説明した。

表1 2010年3月期の業績見通し
2009年3月期実績2010年3月期見通し ( )内は前期比
携帯電話サービスのARPU5800円5420円(-380円)
携帯電話サービスの累計契約数3084万3160万(+76万)
携帯電話サービスの端末販売台数1081万1000万(-81万)
固定系アクセスの累計回線数534万595万(+61万)
うちFTTHの累計契約数110万152万(+42万)