図1 屈折率が高いほど,アッベ数は小さくなる。縦軸のndが屈折率,横軸のνdがアッベ数を表す。図にはオハラのプレス成形向け光学ガラスのラインアップが示してある。
図1 屈折率が高いほど,アッベ数は小さくなる。縦軸のndが屈折率,横軸のνdがアッベ数を表す。図にはオハラのプレス成形向け光学ガラスのラインアップが示してある。
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図2  L-LAL67の特性
図2  L-LAL67の特性
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図3  L-PHL3の特性
図3  L-PHL3の特性
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図4  L-LAH87の特性
図4  L-LAH87の特性
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図5  L-LAH85の特性
図5  L-LAH85の特性
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 オハラは,2009年4月22~24日まで開催されている「レンズ設計・製造展 2009」で,同社の光学ガラス材料を複数出展した。そのうち,「L-LAL67」「L-PHL3」「L-LAH87」の3種類が開発品でサンプル出荷中である。いずれも同社従来品に比べてプレス成形時に必要な温度を下げた点を特徴とする。この温度が低いほど金型の劣化を抑えられるという。

 L-LAL67とL-PHL3, L-LAH87はそれぞれ屈折率やアッベ数が異なる。一般に,レンズ材料の屈折率が高いほど光学機器を薄型にできる。例えばデジタル・カメラのレンズに利用すればカメラ本体を薄くできる。アッベ数は色収差の出やすさを表す指標で,小さいほど色収差が生じやすい。一般に屈折率が高いほどアッベ数は小さくなる(図1)。

 L-LAL67の屈折率(以下,すべてnd)は1.66910で,アッベ数は55.4である。同程度の屈折率とアッベ数を備えたオハラの従来品「L-LAL12」に比べて,プレス成形に必要な温度を70℃ほど低くしたという(図2)。L-LAL67のガラス転移点は490℃,ガラス屈伏点は520℃である。実際にプレス成形に必要な温度は屈伏点に比べて,「おおよそ+10~+20℃ほど高くなる」(説明員)という。つまりプレス成形に必要な温度は530~540℃になる計算である。

 L-PHL3は,ガラス転移点が327℃,ガラス屈伏点が367℃と非常に低いのが最大の特徴(図3)。屈折率は1.58313で,アッベ数は59.4である。同程度の屈折率とアッベ数を備えたオハラの従来品には「L-BAL42」があり,同社の資料によればガラス屈伏点は538℃である。

 L-LAH87は,屈折率が高く,かつ低分散なレンズに利用する品種である(図4)。ガラス転移点は544℃,ガラス屈伏点は593℃。同程度の屈折率とアッベ数を備えたオハラの従来品「S-LAH66」は同686℃,同706℃だった。L-LAH87の屈折率は1.77030で,アッベ数は47.4である。

 開発品のほか,量産中,あるいは量産直前の品種も展示していた。中でも,「引き合いが多く,非常に期待している」(説明員)とするのが,「L-LAH85」である(図5)。現在,量産に向けた最終調整を行っているという。屈折率は1.85400で,アッベ数は40.4である。