図1 ウィルコム代表取締役社長の喜久川政樹氏
図1 ウィルコム代表取締役社長の喜久川政樹氏
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図2 サービス地域は東京都のJR山手線内の一部。オレンジ色の部分が2009年4月27日〜5月30日のサービス範囲。青色の部分が2009年6月以降のサービス範囲。
図2 サービス地域は東京都のJR山手線内の一部。オレンジ色の部分が2009年4月27日〜5月30日のサービス範囲。青色の部分が2009年6月以降のサービス範囲。
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図3 WILLCOM CORE XGP対応のデータ通信カード。NECインフロンティア製の「GX000N」(左)とネットインデックス製の「GX000IN」(右)
図3 WILLCOM CORE XGP対応のデータ通信カード。NECインフロンティア製の「GX000N」(左)とネットインデックス製の「GX000IN」(右)
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図4 XGP向けの基地局は京セラが開発
図4 XGP向けの基地局は京セラが開発
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図5 2009年6月には2〜300mごとに基地局を設置
図5 2009年6月には2〜300mごとに基地局を設置
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図6 下りの実測値は平均18.5Mビット/秒
図6 下りの実測値は平均18.5Mビット/秒
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図7 上りの実測値は平均12Mビット/秒
図7 上りの実測値は平均12Mビット/秒
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 ウィルコムは2009年4月22日,次世代PHS技術を用いた高速無線データ通信サービス「WILLCOM CORE XGP(extended global platform)」を開始すると発表した(発表資料)。2009年4月27日から東京都内でXGPのデモおよび実証実験を開始する。2009年6月1日以降,法人モニターに向けに無料の試験サービスを開始し,2009年10月から有料サービスに移行する予定。「真のワイヤレス・ブロードバンドを実現できるのはXGPだけだ」(同社代表取締役社長の喜久川政樹氏,図1)と自信を見せる。

 ウィルコムが提供するデータ通信サービスの詳細は以下の通り。2009年4月27日~5月30日までの期間は,同社本社でのデモや安定したエリア構築に向けたチューニングなどを実施する。このほか,一部のパートナー企業とアプリケーション実証試験を実施する予定。2009年6月1日以降に開始予定の試験サービスは,MVNO(仮想移動体通信事業者)やマスコミなど,5000程度の法人を対象とする。サービス地域は東京都のJR山手線内の一部である(図2)。サービス利用料は無料で,データ通信端末も無償で貸与する。2009年10月からの有料サービス開始時の料金設定に関しては,「現在検討中だが,既存のPHS事業のデータ通信サービスに比べてものすごく高くなるわけではない」(ウィルコムの喜久川氏)と述べるにとどまった。

 WILLCOM CORE XGPのサービス開始に合わせて,対応するデータ通信カードも発表した。NECインフロンティア製の「GX000N」とネットインデックス製の「GX000IN」の2機種である(図3)。ともにPCカード型の端末で,パソコンに接続して利用する。データ通信用のチップセットは,NECインフロンティアの端末がカナダWavesat Inc.製,ネットインデックスの端末が,イスラエルAltair Semiconductor Ltd.製。いずれも,モバイルWiMAX(IEEE802.16e)向けのチップセットを流用した。

 XGP向けの基地局は京セラが開発した(図4)。「現行のPHS向けの基地局とほぼ同等の大きさでアンテナも共用できる」(ウィルコムの喜久川氏)。基地局の設置数は「現時点で100機程度」(喜久川氏)という。2009年6月の試験サービス開始までに,「数百機になる見込み。エリア内で2~300mごとに基地局を設置していく」(喜久川氏)という(図5)。2009年6月以降の基地局の設置計画に関しては,「現在検討中」との回答にとどめた。

データ伝送速度の実測値は下りが18.5Mbps,上りが12Mbps

 高速無線データ通信サービスとしては,UQコミュニケーションズが2009年2月26日からモバイルWiMAXを使った「UQ WiMAX」の試験サービスを開始している( Tech-On!の関連記事)。XGPは,周波数帯が2.5GHz帯であるほか,変調方式は「OFDMA(orthogonal frequency division multiplex access)」を採用するなど,モバイルWiMAXとの技術的な共通点は多い。

 XGPは,現行のPHSと同様に数十~数百mごとに基地局を設置する「マイクロセル方式」を採用する。「基地局1台当たりのトラフィックを分散できる」(ウィルコムの喜久川氏)ため,データ伝送速度が低下しにくいという。一方,携帯電話サービスでは,1台の基地局で数百~数kmの範囲をカバーする「マクロセル方式」を採用している。喜久川氏は,XGPのモバイルWiMAXに対する優位点として,データ伝送速度が上り/下りともに高いことを挙げる。記者会見では,会場の屋外に設置済みの基地局を用いてXGPのデータ伝送速度を計測するデモを披露していた。空間多重技術のMIMO(multiple input multiple output)を用いずに,データ伝送速度は下りが平均18.5Mビット/秒,上りが平均12Mビット/秒を実現していた(図6,図7)。