裏側の筐体を取り除いた様子。左が新機種,右が旧機種。(写真:中村 宏)
裏側の筐体を取り除いた様子。左が新機種,右が旧機種。(写真:中村 宏)
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旧機種のメイン基板。(写真:中村 宏)
旧機種のメイン基板。(写真:中村 宏)
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新機種のメイン基板。(写真:中村 宏)
新機種のメイン基板。(写真:中村 宏)
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 先行して裏側の筐体の取り外しに成功した旧機種「Amazon Kindle」に遅れることしばし,新機種「Amazon Kindle 2」の裏側の筐体もようやく取り外すことができた。

 「すっきりしているなぁ。これは,一から設計を見直しているぞ」――。

 分解作業に立ち会った技術者は,思わず声を上げた。

 あらわになった旧機種と新機種のメイン基板。その二つは,見るからに「別物」だった。数多くの部品が所狭しと詰め込まれ,「盛りだくさん」の旧機種。一方新機種は,明らかに部品点数が少なく整然としている。

 メイン基板を詳しく分析するため,基板を表側の筐体から取り外した。まずは基板の裏側を見てみる。すると新機種のメイン基板の裏側には,何も部品を実装していない。これに対して旧機種のメイン基板の裏側には,256MバイトのNANDフラッシュ・メモリ(Samsung Electronics社製)をはじめ,さまざまな部品が実装されていた。「旧機種は複雑,新機種はシンプル」という印象がますます強くなっていく。

 ここで前出の技術者は,メイン基板に搭載されている各種の部品をチェックしながら,冷静に分析を始めた。

 「旧機種は,米E Ink Corp.製の電子ペーパーを駆動させるためのリファレンス設計をそのまま使っている。まず『何とか動かそう』という意図が見える。その結果,部品点数が多く,複雑な構成になっている。これに対して新機種は,マイクロプロセサなど一から回路構成を見直している。まるで,携帯電話機の設計思想を持ち込んだかのようだ」――。

 つまり技術者の分析によれば,新機種ではリファレンス設計から脱皮し,簡素化するために設計に手を加えているというわけだ。

 メイン基板に搭載されている部品のほんの一例を紹介する。旧機種のマイクロプロセサはIntel社製の「XScale 255」(Intel社は2006年6月にXScaleなどを販売する部門を米Marvell Technology Group社に売却),USBコントローラICはNXP Semiconductors社製。Infineon Technologies社製のシンクロナスDRAMが二つ使われていた。

 一方,新機種のメイン基板に搭載されていたマイクロプロセサは,Freescale Semiconductor社製の「iMX31」。携帯電話機などに向けたプロセサだ。USBコントローラ機能は,これに内蔵されているとみられる。2GバイトのNANDフラッシュ・メモリや,二つ搭載されているシンクロナスDRAMは,いずれもSamsung Electronics社製だった。

(部品の説明は本誌の推定。社名は,チップ刻印を参照したもので,現時点の社名とは異なる場合があります)

 続いて,電子ペーパーの分析に取り掛かった。

――次回に続く――

「Amazon Kindle」新旧機種の分解については,日経エレクトロニクス2009年4月20日号のNEレポート「Amazon社の電子ブック「Kindle」の新旧機を分解」にも掲載しております。