日立製作所の執行役会長兼執行役社長の川村隆氏
日立製作所の執行役会長兼執行役社長の川村隆氏
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 2009年4月1日付けで日立製作所の執行役会長兼執行役社長に就任した川村隆氏は,4月20日に開催した就任会見で,「新経営陣が一丸となって,日立グループ全体のリソース配分の最適化を図り,事業ポートフォリオの再構築を加速していく」と宣言した。具体的に注力する分野として,「日立グループとしての力を最大限に発揮し,グループのアイデンティティを明らかにする意味で,これまで以上に(情報通信技術システムなどのインフラ事業である)『社会イノベーション事業』への傾斜を深めていく。これらの提供こそが,他社に真似できない日立の強みであり,日立の原点だ」(同氏)との考えを示した。これまでのような「(民生機器から産業機器までのすべてを手掛けてきたような)コングロマリット路線から,社会イノベーション事業へ若干軸足を移す」(同氏)という。

 社会イノベーション事業は,具体的に「情報通信システム」「電力システム」「環境・産業・交通システム」「社会・都市システム」などの事業分野を指す。川村氏は,2009年3月16日に開催した社長人事の記者会見でも同様の考え方を示していた(Tech-On!の関連記事1)。

「赤字は悪」と川村氏

 一方で,赤字が続く薄型テレビなどのAV機器を手掛ける「コンシューマ」事業と自動車部品を手掛ける「オートモティブシステム」事業については「赤字は悪」(日立製作所の川村氏)との考えの下,早急な対策を進めていくとする。2009年3月16日に分社化を発表済みのコンシューマ事業については,「経営体質の強化,さらなる組織の再編,他社とのアライアンスを含めた抜本的な事業構造の改革を検討していく」(同氏)という。ただし具体的な内容に関しては,「現在,さまざまな検討が並行して続いている状態なので何も言えない」(同氏)との回答にとどまった。新会社が発足する2009年7月までに,会社説明会を開催し詳細を発表する予定という。

 同じく分社化を発表済みのオートモーティブシステム事業についても,「拠点の整理,統廃合,注力事業への一層の集中を進めることで,市況回復時に新しい付加価値を提供していく」(日立製作所の川村氏)という。加えて,日立金属や日立化成などが手掛ける高機能材料事業については,「社会イノベーション事業への貢献が大きい分野に特に注力していく。ボラティリティ(変動性)の大きい分野や,コモディティ化した分野にはやや距離を置いていく」(同氏)との考え方を示した。赤字から黒字に回復しつつある電力事業やHDD事業については,さらなる基盤強化を図っていくとした。

 なお,持分法適用会社であるルネサス テクノロジについては,「(2009年3月末に540億円を)増資することは三菱電機と同意した」(日立製作所の川村氏)とした。今後の方向性については詳細な検討を関係者一同集まって進めている段階だ。時期が来れば発表する」(同氏)と回答するにとどまった。ルネサス テクノロジはNECエレクトロニクスとの経営統合が取り沙汰されている(Tech-On!の関連記事2)。