3D ディスプレイの国内市場規模の推移
3D ディスプレイの国内市場規模の推移
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 矢野経済研究所は,3次元(3D)ディスプレイ市場の調査結果を発表した(発表資料)。同研究所の推計によれば,2008年の国内の市場規模は,対前年比60.9%増の13億5500万円。2008年から3Dディスプレイ市場に登場した,3D放送対応テレビやデジタル・サイネージといった新しい用途の出荷額が市場全体の約3割を占めており,市場拡大に貢献しているという。ただし,現時点では特定の領域で大きな市場が存在するのではなく,個々の分野での試験的な導入が中心とする。今後は,大手家電メーカーが3Dホーム・シアター製品や周辺機器事業への参入を計画している(Tech-On!の関連記事同2)。

 矢野経済研究所によれば,3Dディスプレイ市場はこれまで2度の立ち上がりに失敗しているという。その主な要因は,コンテンツの不足や3Dディスプレイならではの用途が提示されなかったこと,コストが2次元のディスプレイと比べて高いことだった。しかし,今回は「ハリウッドの著名な映画監督が3D映画に本格的に取り組むことを宣言したことで,3D映画市場の立ち上がりが確実視されている。その映画コンテンツを映画館だけでなく,家庭でも視聴できるよう,大手家電メーカーなどが取り組んでいる」ため,3Dディスプレイ市場の成長が期待できるという。

 同研究所は,3Dディスプレイの国内市場の規模を2014年に223億7000万円,2019年に4321億5000万円と予測する。2008年比で見ると,2014年が約16.5倍,2019年が約318.9倍である。2014年の時点での主な用途は,アーケードから家庭用までを含むゲーム機やデジタル・フォト・フレーム,デジタル・サイネージなど。2014年の国内市場において,3Dホーム・シアター製品や周辺機器は導入初期段階にあたり,市場全体に占める割合は高くないと予測する。

 2019年には,家庭用の一般のテレビにも3D視聴機能が付加され,BSやCS,CATVなどの放送局で3D放送が開始されるとみる。携帯電話機の3Dディスプレイ搭載率も2014年に比べて増加する見通し。2014年の時点で市場拡大が期待できるゲーム機も,2019年には眼鏡式から裸眼式への移行が進むと予測する。裸眼式の採用数の増加によって,眼鏡をかける手間がなくなり,3Dディスプレイ採用の可能性がさらに広がる見込みという。

 なお,この調査は,眼鏡式および裸眼式3Dディスプレイ・メーカーおよび周辺の用途メーカーなどへの面談取材や,文献調査などに基づくもの。調査期間は2009年1~3月である。