図1 開発した導電性フィルムである。フィルムの上にある拡大鏡で銀線を見ることができる。
図1 開発した導電性フィルムである。フィルムの上にある拡大鏡で銀線を見ることができる。
[画像のクリックで拡大表示]
図2 展示パネル
図2 展示パネル
[画像のクリックで拡大表示]

 富士フイルムは,2009年4月15~17日まで開催されている「第19回 ファインテック・ジャパン」で,同社が開発した新しい導電性材料を初めて展示した(Tech-On!関連記事)。PETフィルム上に,この導電性材料と微細な銀線パターンを組み合わせることで,導電性フィルムとして利用する(図1)。導電性材料の組成は明らかにしていない。透明電極で利用されるITOの置き換えを狙ったもので,液晶パネルやPDP,タッチ・パネル,無機ELを使った平面光源,太陽電池など幅広い用途を想定する。ITOによる導電膜に比べて,シート抵抗値が低く,かつ幅広い範囲でシート抵抗値を設計できる点や,高い屈曲性などを特徴にうたう(図2)。

 銀線の太さや銀線のパターンなどを変えることでシート抵抗値を変更できるという。その範囲は,「0.2~3000Ω/□ほどと非常に広い」(説明員)。中でも,最小で0.2Ω/□と低い値を実現できる点を大きな特徴とする。「ITOの場合,抵抗値が低い特殊な品種で20Ω/□ほど。一般的には80~500Ω/□ほどで,開発品は極めて低いシート抵抗値を実現できる」(同)。例えば,タッチ・パネルでは300~500Ω/□,無機EL照明では80Ω/□ほどの品種が利用されているという。

 今回の開発品では低いシート抵抗値を実現できるため,想定する用途の中でも,「無機EL照明での採用に期待している」(説明員)という。シート抵抗値が小さいほど,無機EL照明を大型化しやすいといった利点が生じるためである。

曲げてもシート抵抗値は変わらない

 会場では,高い屈曲性を強調するため,直径4mmの円柱に開発品を何度も巻き付けた試験の結果を例示していた。この結果によれば,100回巻き付けた後もシート抵抗値に変化はない。一方,ITOの場合は,巻き付ける回数が増えるほどシート抵抗値が大きくなっている。

 透過率に関しては,可視光の領域で80%以上とITOの導電膜と同程度と説明する。現状では,「最大89%にできる」(説明員)という。

 開発品は,ITOに比べて「安価に製造できる」(説明員)点も特徴とする。塗布技術により製造できるためである。ロール・ツー・ロールでの生産が可能だという。

 現在,開発品を限定的な顧客に提供しているが,「2009年8~9月ごろをメドに,幅広く出荷したい」(説明員)とする。