人体通信によって個人を一人ずつ認識し,認識した信号を鍵の開錠などに利用できないか――人体通信の研究がそんな方向に進み始めた。従来は,人体通信用回路を内蔵したカードを利用者が携帯し,ドアやロッカーなどに触れると開錠するといった使い方が一般的だった。これに対し,カードがなくても個人を認識できるかどうかを,無線技術の研究/開発を行うアンプレットは研究している。

 「現時点で明確なことはまだ言えないが,人体通信用回路を内蔵したカードを利用者が携帯する必要がなくなれば,他の近距離無線システムと異なる人体通信の特徴になるかもしれないと考えている」(アンプレット代表取締役の根日屋英之氏)という。

 これが実現すれば,指紋や手のひらの静脈,虹彩などと同様のデータを,人体通信で得られることになるかもしれない。この際,利用する信号は,例えば人が動くことによって発生する筋電流の変化である。同社は,今回の研究の方針などについて2009年4月17日に開かれる人体通信のセミナー「人体通信の最新技術動向とビジネス展開」で発表する。

 同社は,椅子に人が座り,両手を左右の肘掛けの電極に載せるだけで心臓の動きを計測できる装置を試作している(関連記事)。今回の個人認証も含め,人体通信の応用分野がデータ伝送からセンシング/計測へと広がる可能性が出てきたといえる。



【お知らせ】セミナー「新市場を創るワイヤレス通信応用の開発技術
人体通信と既存ワイヤレス通信との併用や,人体通信とセンシング技術との融合による新しい応用について解説。2009年10月22日(木)開催。