青山学院大学 理工学部 阿部二朗准教授らは,紫外線を照射することで無色から青色に発色する有機フォトクロミック化合物を開発し,製品化することを発表した(ニュース・リリース)。今回開発したフォトクロミック化合物は,紫外線を遮ってから約30msで無色に戻る。高分子フィルム中では約20msで消色するという。加えて,発色・消色を繰り返しても特性が劣化しにくい優れた耐久性を示す。製造は関東化学が手掛け,2009年5月1日に販売を開始する。

 フォトクロミック化合物は,太陽光の下で瞬時に発色し,室内に入ると瞬時に無色に戻る変色型の調光サングラスなどに利用できる。このほか関東化学は,3次元ホログラフィを利用したディスプレイや記憶素子などへの応用に期待する。

 阿部准教授らは,2008年夏,紫外線を照射すると無色から緑色に発色する有機フォトクロミック化合物を発表している。調光サングラスに使用されいるフォトクロミック化合物と比較して消色速度の点で優れていたため,注目された。それでも,光照射を遮ってから消色するまでに約200msかかっていため,わずかに残像が残った。

 今回の研究成果は,米国化学会が発行する「Journal of the American Chemical Sociey」の2009年4月1日号に掲載された。

今回開発したフォトクロミック化合物。紫外線を照射するとC-N結合が解離し,青に発色するラジカル分子が生成する。
今回開発したフォトクロミック化合物。紫外線を照射するとC-N結合が解離し,青に発色するラジカル分子が生成する。
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