アイシン精機と豊田中央研究所は,2009年3月27~30日に千葉の日本大学で開かれた「日本化学会第89春季年会」で講演し,2005年に名古屋で開かれた2005年日本国際博覧会(愛・地球博)向けに作製した色素増感型太陽電池パネルの性能を現時点で解析した結果について報告した。

 このパネルはアイシン精機製。トヨタ自動車が,愛・地球博開催の半年ほど前に会場近くにある「トヨタ夢の住宅PAPI」などに設置したものである(当時のリリース)。

 アイシン精機らによれば,これらの太陽電池パネルは,実環境での耐久試験として現在までほぼ当時のまま設置されているという。具体的には,これらの太陽電池パネルは2種類の環境に設置された。一つは,PAPIの外壁に組み込まれた。もう一つは,庭の水場の上に設置された。

 壁に設置された太陽電池パネルは,設置後約1651日(4年半超)経過したものでも変換効率は初期性能の8割をわずかに下回ったところだという。一方,水場の上に設置されたものは,設置後2年半で変換効率が初期性能の8割に低下した。色素増感型太陽電池は一般に水分に弱いとされるが,それでも2年半は持ちこたえたことになる。「色素増感型太陽電池の耐久性が必ずしも低くないことを示せた」(アイシン精機)。

 両社は今回の発表,性能が経時変化する原因についても言及した。「性能低下は色素が劣化するのではなく,電解質中のイオンI3が減少するため。パネルの外部に流出するほかに,強い光を受けることでI3が,I5やI7に変わり,赤い沈殿物になることが原因である可能性がある」(アイシン精機)という。