最後は家庭のコモディティの場で勝ったらええんですよ。モノづくりを軸にして,家庭自体をコンピュータ化するということです。こう言うとハードのモノづくりだけやっていればいいのかという極論になりがちなのだけれど,そうではない。「セイ・イエス・ソフト」戦略は,ハードウエアだけではなく,いかにハードとソフトを最適に組み合わせるかが重要なのは言うまでもないでしょう。

 家庭内の機器をデジタル化し,サーバーを導入し,ゲートウエイを通じて外のネットワークにつなげる。ずいぶん前から業界内で構想されている形ではありますが,ここにきて実現のハードルがかなり下がっています。今あるインフラや技術を組み合わせるだけで,面白いことができる。こうしたデジタル家電やネットワーク技術などの世界標準を奪う取り組みをなぜやらないのかなぁ。家庭の情報化で世界中にコミュニケーションの輪を広げたら,世界平和が訪れますよ。

みんなで集まって世界標準を作れるわけがない

 「標準」という言葉を使うと,また細かいことを言い始める人が出てくる。家電メーカーがみんなで集まって標準技術を決めようとするでしょう? でもね,標準技術というのは,いろいろな技術が世の中に出てきて,切磋琢磨することで初めて生まれるものですよ,本来は。「みんなで集まって標準を決めましょう」なんてあり得ない。なかなか独自に走りだそうとするメーカーが日本では出てこないですな。ソニーあたりにはできるかと思ったけれど,なかなかうまくいっていない。

 日本メーカーには「セイ・イエス・ソフト」戦略を実現するハードウエアの力がある。資金もある。例えば,薄型テレビの周辺は半導体とソフトの塊でしょう。ソフトウエア開発についても,日本メーカーはだいぶマスターしつつあるはずです。

 ただ,最大の問題なのは,シンプルに作れないことやなぁ。過剰に,要らないものを山のように機器につけてしまう。機能をシンプルにして,世界の標準にして売る。こういう風には,なかなか思い切れないんですね。機能をたくさん付けたら勝てるとまだ思っている。