VIZIO社と船井電機の特許係争にまた一つ進展があった。以下に経緯を整理して紹介する。今回および今後の動きは,小見出し「074特許は無効とUSPTO」以降に記載した。

 VIZIO社は2007年に,船井電機を含むCRTテレビの時代から米国市場を押さえていた企業からシェアを奪う格好で爆発的に成長した。これに対し船井電機は,米国特許5,329,369号6,115,074号を武器にVIZIO社に対して特許係争を始めた。

 前者(369特許)に対し,国際貿易委員会(ITC)はVIZIO社による特許侵害を認めず,特許商標庁(USPTO)は369特許に有効性が認められないとした。

 一方,後者(074特許)に関しては,ITCにおいてVIZIO社による特許侵害の事実が確定した。VIZIO社が船井電機と074特許に関するライセンス契約を結ばなければ,ITCは2009年4月ころにVIZIO社によるテレビの輸入を差し止める見込みである。

 ところが,VIZIO社はライセンス条件が「極めて高額かつアンフェア」(VIZIO社)として契約締結を拒絶した。代わりにFCCが船井電機に「ライセンス料を妥当にせよ」と命じることを期待して,VIZIO社はFCCに嘆願書を提出した。船井電機は,これに異議を申し立てている

074特許は無効とUSPTO

 こうしたITCとFCCを舞台にした係争と並行して,USPTOでは,ITCが侵害と認めた074特許がそもそも有効かどうかについて再審査を進めていた。その結論が2009年3月13日に出た。074特許が有効だという船井電機の主張を認めないというものである。これは「2度目の拒絶理由通知であり,USPTOによる最終結論である」(VIZIO社のプレス・リリース注1)

 ただし,USPTOがどう判断しようと,ITCは禁輸措置を下せる。USPTOとITCは別の行政機関だからだ。このためVIZIO社は引き続き,FCCの助力の下でライセンス料を引き下げた後,船井電機と契約を結ぼうとしている。「法外なライセンス料を払えば,そのつけは米国の消費者にまわってしまう。我々は米国の行政・司法機関に対しこの事実を精力的に伝えていく」(VIZIO社)。

注1)3月13日の通知には変わる余地がある。船井電機には,CAFC(連邦巡回区控訴裁判所)に訴え出るという手が残されているほか,「当社やVIZIO社以外の第3者が再審査を請求できる」(船井電機)という。