図1 開発した映像通信システムである。左側が局側装置(OLT)を,右側がユーザー側装置(ONU)を想定している。中央にあるのが,20kmの光ファイバである。
図1 開発した映像通信システムである。左側が局側装置(OLT)を,右側がユーザー側装置(ONU)を想定している。中央にあるのが,20kmの光ファイバである。
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図2  FTTH用のアクセス回線の変遷
図2  FTTH用のアクセス回線の変遷
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図3 開発システムの構成
図3 開発システムの構成
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図4 ビット誤り率に関する説明
図4 ビット誤り率に関する説明
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 日立製作所は,FTTHに向けた10Gビット/秒の映像通信システムを開発した(図1)(発表資料)。IEEE802.3avにおいて標準化が進められている「10G-EPON」に準拠した。同仕様はまだ協議中だが,「技術的な仕様はほぼ固まっている」(同社)。この仕様に基づき,今回の映像通信システムを開発した。通信距離20kmでユーザー側の光送受信装置32台を接続した場合に,ビット誤り率10-12での通信品質を実現できるという。

 現在,日本のFTTH用の加入者宅のアクセス回線として,基地局側から家庭に向けた「下り」方向と,反対の「上り」方向の最大伝送速度が共に1.25Gビット/秒で,伝送形式にEthernetフレームを利用する「GE-PON」が主に採用されている(図2)。下り方向の配線を複数の加入者で共有する場合は,各加入者での伝送速度は1.25Gビット/秒を下回る。GE-PONはIEEEで標準化されたものだが,同種のFTTH向け技術としてITUで標準化された「G-PON」もある。今回の10GE-PONはGE-PONの次世代仕様という位置付けだ。

 開発品は主に局側装置(OLT)とユーザー側装置(ONU)で構成する(図3)。実現する上でカギを握ったのが,OLTの受信側で利用するトランスインピーダンス・アンプ(TIA)である。ONUからOLT側に向かう上りの光信号は,ONUごとに光強度が異なる。各加入者宅によってOLTとONUの通信距離が変わるなど,通信環境が異なるためだ。そこで,OLTの受光素子から出力される電気信号を増幅するTIAに改良を加えた。上りの光信号強度によって利得を変える。これにより,強い光信号と弱い光信号の差(ダイナミックレンジ)が20dBでも,OLTは正しく上りの光信号を受信できるとする。

 誤り訂正符号には,上り下りともに(255,223)のリード・ソロモン符号を採用した。これにより,10G-EPONで求められる,上り信号の受信感度-25dBmでビット誤り率10-12以下という基準を満たした(図4)。

 IEEE802.3avにおける10G-EPONの標準化は2009年12月ごろに完了すると日立製作所はみている。開発品の実用化に関しては,「3~5年後ではないか」(同社)とする。