図1◎実証試験を実施したJHFC千住水素ステーションの様子。左のリフォーマ試験機の大きさは幅3.6×奥行き2.6×高さ2.3m,右のCO2分離・回収試験機は幅2.1×奥行き1.5×高さ2.3m。
図1◎実証試験を実施したJHFC千住水素ステーションの様子。左のリフォーマ試験機の大きさは幅3.6×奥行き2.6×高さ2.3m,右のCO2分離・回収試験機は幅2.1×奥行き1.5×高さ2.3m。
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図2◎水素分離型リフォーマの仕組み。
図2◎水素分離型リフォーマの仕組み。
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図3◎CO2分離・回収の仕組み。
図3◎CO2分離・回収の仕組み。
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 東京ガスは2009年3月12日,水素製造時に二酸化炭素(CO2)を分離・回収する実証実験において,製造効率を保ちながらCO2排出量を半減することに成功したと発表した。同社は,JHFC千住水素ステーション(東京都荒川区)内で燃料電池車向け水素ステーション用の水素製造装置の開発と実証を行っている。同社は今回,この水素製造装置にCO2分離・回収装置を接続し,2008年11月から実験を実施していた(図1)。得られた試験データを分析した結果,CO2の分離・回収に伴うエネルギ損失は約3%だった。

 JHFC千住水素ステーションでは,水素分離型リフォーマを使用して都市ガスから水素を製造している。同リフォーマは,都市ガス(メタン)と水蒸気の間で起こる水蒸気改質反応によって水素とCO2を生成。その反応が起こる改質器内に水素だけを透過する膜を設置することで,生成した水素をその場で選択的に取り出す(図2)。水素の製造効率は81.4%で,化石燃料からの水素製造プロセスでは「世界最高効率」(東京ガス)という。

 同リフォーマは,改質反応と水素分離を一つのプロセスで行うため設備を小型化できる。さらに,水素製造時に排出する改質オフガス(水素を取り出した後の残りのガス)中にCO2が70~90%の濃度で濃縮されるため,CO2を分離・回収しやすいのも利点だ。

 水素分離・回収装置では,リフォーマから排出された改質オフガスを7MPaまで圧縮し,さらに-20℃に冷却することで,改質オフガス中のCO2を液化し,そのほかのガスから分離して回収する(図3)。このとき,改質オフガスに含まれるメタンや水素の結合ガスについては,燃料ガスとしてリフォーマの加熱に使用する。

 東京ガスは現在,「ローカル水素ネットワーク」を構想している。これは,CO2を分離・輸送・処理する分散型CCTS(Carbon Dioxide Capture,Transportation and Storage)を伴う水素ステーションを核とするネットワークだ。水素を燃料電池自動車に充てんするほか,周辺の家庭やオフィス,工場にパイプラインで供給。さらに高効率な燃料電池などを利用することで,CO2の削減を図る。同社は,今回の実証試験の成果を同ネットワークの構築に生かす計画だ。 

 なお,今回の実験で使用したリフォーマは,東京ガスと三菱重工業が共同で,2005~2007年度の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「水素安全利用等基盤技術開発事業」を通じて開発したもの。