「これが3次元タッチ・パネルだ」,三菱電機が動作デモを披露
三菱電機は,指とパネルの距離を検出できる静電容量方式のタッチ・パネルを試作し,2009年3月5〜6日に東京で開催された「インタラクション2009」で動作の実演を披露した(図1)。従来の平面(x軸方向,y軸方向)だけでなく,法線方向(z軸方向)の指の位置も検出できるため,同社は「3次元タッチ・パネル」と呼ぶ。試作品の画面サイズは5.7インチで,画素数は640×480画素(VGA)である。
試作品はタッチ・パネルが小さい携帯機器に向けたものである。応用例として,パソコン上で,マウスのポインタをアイコンに載せるとアイコンが変化する,「マウス・オーバー機能」を携帯機器で実現することを想定している。会場では,試作品を使って,サムネイル画面のアイコンや地図データのアイコンに指を近づけるとアイコンが変化する実演を見せた(図2,3)。「小さい画面ほどマウス・オーバーのような機能が有用だと考えている」(説明員)
z軸方向の容量の時間変化を計算すれば,「指がパネルに近づく際の加速度も検出できる」(説明員)という。これにより,指を急に近づけたか,あるいはゆっくりと近づけたか判断できる。例えば,「急に近づければ液晶パネルのバックライトを赤に,ゆっくり近づければ青色に変えるなど,エモーショナルな使い方も可能になる」(同)。
検出方法を切り替え
試作品の特徴は,ITOの透明電極を利用しつつ,近接した指の距離を検出できるようにした点である。指がパネルに触れない場合は,パネルに触れている場合に比べて容量変化が小さく,検出感度を高める必要がある。銅電極などを使えば,指の近接状態を検知するのに必要な感度を得られるものの,透明ではない。一方,単純に透明電極を用いると,銅電極に比べて感度が低下してしまう。パネルの抵抗値が高くなるからだ。
そこで,指がパネルに近づいている「近接状態」と,指が触れる,あるいは指とパネルの距離が極めて近い場合の「接触状態」で検出方法を切り替えた。近接状態では感度を,接触状態では分解能を優先する。
近接状態では,0.3pFほどの容量変化を,接触状態では8〜10数pFの容量変化を検出できるという。近接状態でのx軸,y軸方向の分解能は距離に換算すると10mmほど。Z軸方向に関しては,「少なくとも20mm以内の距離なら,指の近接状態を検出できる」(説明員)。z軸方向の分解能は256段階とする。接触状態では,x軸,y軸方向の分解能は,距離に換算すると0.2mmほどだという。
応答速度も近接状態と接触状態で異なる。近接状態では約50msで,接触状態は10msほどだとう。一方,消費電力は両状態で「差は無い」(説明員)という。
今回,近接状態では複数のセンサをつなぎ,センサ面積を拡大して感度を高めている(図4)。一般に,センサ部が大きいほど感度が向上するからだ。
加えて,回路の寄生容量を低減するために「センサーシールド制御」と呼ぶ機能も追加した(図5)。試作品では,x軸方向の電極と,y軸方向の電極とが上下に配置されている。センサ駆動時,上部と下部とで電位差が生じ,寄生容量が増えて,感度が低下してしまう。そこで,同相で同電圧の信号を流すことで,寄生容量を抑制した。センサーシールド制御を導入することで,液晶パネルなどから生じる電磁雑音を抑制するシールド層も不要にした。
変更点は少ない
試作品は,市販されている静電容量方式タッチ・パネルを基にしており,「変更点はわずか」(説明員)だという。複数のセンサをつなげるためのスイッチ素子や,検出回路での寄生容量を抑制するための回路上の工夫などを盛り込んだ程度とする。このため,「研究開発側としては,大幅なコスト上昇にはつながらないと考えている」(同)。製品化は未定だが,「採用するとしてもまずは自社製品」(同)とする。製品化に向けて,耐環境性や,実際の機器に搭載した場合の動作検証を進める考えだ。
なお,今回採用した静電容量方式は,携帯機器に向く投影型なので大型画面への対応が難しい。現在,10インチ以上の画面への対応に向けた取り組みも始めているという。表面型の静電容量方式タッチ・パネルには,試作品のような検出方式を適用できないとする。












