「タッチパネルの進化はこれから」,タッチパネル研究所の三谷社長が今後を展望
タッチパネルを活用した機器が話題を呼んでいる。ゲーム機や携帯電話機にタッチパネルを搭載したヒット商品が相次いでおり,電子機器へのタッチパネル搭載の勢いは今も止まらない。例えば,2009年2月16〜19日にスペインのバルセロナで開催された携帯電話に関する世界最大の展示会「Mobile World Congress 2009」でも,タッチパネルに関する発表が相次いだ(韓国Samsung Electronics社の関連記事,仏Stantum Technologies社の関連記事,東芝の関連記事)。
タッチパネル技術の現状,今後の開発の方向性と課題,業界の課題について,長年タッチパネルの開発に取り組んできたタッチパネル研究所代表取締役社長の三谷雄二氏に聞いた。(聞き手は安保秀雄=電子・機械局編集委員)
問 タッチパネル技術の現状はどうなっているのでしょうか。
三谷 これまでの“常識”は大きく変わっています。以前,タッチパネルはマウスと同様の1点入力のポインティング・デバイスでした。現在は,2点入力などが可能なマルチタッチになっています。
従来の「抵抗膜式は小型,光学式や静電容量式は大型」という図式も変わってきました。抵抗膜式は,22型などの大型ディスプレイに搭載できるようになりました。光学式については,携帯情報端末など小型の機器に搭載できるものを,米RPO社が開発しています。
固定キーなどのデザインを印刷したもの,入力が指とペンの両方で可能なもの,構造が単純で透過率が高い圧電素子を使ったタッチパネルなどもできるようになりました。
問 現在,進んでいる技術開発はどのようなものがありますか。
三谷 フレキシブル・ディスプレイへのタッチパネル搭載,5本同時のマルチ入力,筆圧を検知したり指が近づくと画面がズームアップしたりする3次元入力などの開発が進んでいます。
ディスプレイの中にタッチパネルの機構を組み込んだインセル方式も注目を集めています。これにも光学式と抵抗膜式,静電容量式があります。工数増や歩留まり低下をいかに防ぐかがカギを握ると見ています。
フレキシブル化に向けた材料革命が進行中
問 今後の技術課題について伺います。
三谷 フレキシブル・ディスプレイへのタッチパネル搭載は,これまでなかなか実用化できないと思っていましたが,最近急速に技術開発が進んでいます。これまで,摺動文字筆記特性や打鍵耐久性,曲げなどの機械的特性が課題でした。
この問題を解決するためには,材料から見直す必要があります。現在のITOよりも耐久性や曲げに強いと見られている材料として,例えば導電性高分子があります。カーボンナノチューブ(CNT)やZnO,ナノ・レベルで制御した金属元素を使ったものなどが候補です。ITOナノ分子材料を使ってITO膜を直接プラスチック・シートに加工する方法もあります(三谷,「タッチパネルの最近の開発動向」,『月刊ディスプレイ』,2008年12月号,pp.32-37参照)。
こうした材料開発が地道に進められ,現在は材料革命と言ってよいほど大きく変化しつつあります。新しい材料は,少し前まで研究レベルに過ぎないと見ていましたが急速に進歩しており,実用化はかなり近くなってきたのではないかと見ています。おそらく今後3年以内に実用化するでしょう。
これらの新規材料は,タッチパネルだけでなく,太陽電池や電子ペーパーなどの電極材料としても有望です。
問 材料開発で課題はありますか。
三谷 実用化が見えてきましたが,新しい材料の開発を推進しようとしても,材料メーカーとタッチパネル/ディスプレイ・メーカーの交流が,意外と円滑ではないという問題があります。材料メーカーがいい材料を作っても,使い手のタッチパネル/ディスプレイ・メーカーがなかなか評価できません。
材料の特性測定は時間がかかるし,優れているか競争力があるかを比較評価するのも大変です。材料メーカーが自力でやろうとしても,どう評価してよいか分からない場合が少なくありません。一方で,タッチパネル/ディスプレイ・メーカーは忙しいので,手が回りません。材料メーカーが提案しても,ある程度の確証とよほど大きな利点が得られない限り手を付けません。そこで,当社で材料の特性評価を行っています。
一般にタッチパネルの検査工程は三つあります。(1)タッチパネルの受け入れ検査時の表面抵抗,リニアリティ(電位勾配の直線性),光学特性,(2)出荷検査時の外観,電気特性(端子抵抗やリニアリティ,回路抵抗率,上下電極間の絶縁抵抗),(3)抜き取り検査時の入力荷重,打鍵試験,摺動文字筆記,光学特性,感度,表面うねり度などです。
当社では新しい材料を使ったタッチパネルについて,通常の打鍵試験機や高荷重打鍵試験機,電気特性試験機,小型タッチパネル高速検査機などを使って評価しています(写真参照)。材料メーカーから持ち込まれたものを,無料で評価することもよくあります。材料メーカーとタッチパネル/ディスプレイ・メーカーの架け橋になれば,と思っています。
【お知らせ】セミナー「タッチパネルの最新技術動向と今後の展開」
タッチパネルの現状と今後,マルチ入力/筆圧感知3次元/インセル/フレキシブル化などを解説。2009年6月29日(月)開催。












