ガラス並みに水蒸気透過性を抑えたフィルムの開発成果の発表が相次いでいる。用途は,有機ELや有機薄膜太陽電池などを想定している。大日本印刷の開発したフィルム(大日本印刷の発表資料)は1日当たり10-7g/m2,富士フイルムの開発したフィルム(富士フイルムの発表資料)は同10-6g/m2しか水蒸気が透過しないとする。

 こうしたフィルムを基板に使えば,軽く,薄く,曲げられる電子デバイスを製造できる。さらに,ロール状に巻いた長さ数百m~数kmのフィルムを使って連続的に生産するロール・ツー・ロール方式を採用すれば,多くの製造装置を連結して搬送用装置や手間を省略でき,デバイスの製造コストをケタ違いに下げられる。

 フィルムの水蒸気透過性をガラス並みに抑えるためには,フィルム上への水蒸気バリア層の成膜プロセスの工夫が必要になる。

 富士フイルムでは,写真用フィルムやフラットパネル・ディスプレイ(FPD)材料などで培った有機材料の知見と,膜質や膜厚の制御によって水蒸気バリア性能に影響する欠陥を防いだ。大日本印刷では,クリーン度や真空プロセスの精密制御によって,フィルム上に緻密で平滑な水蒸気バリア層を形成することが可能となったために実現した。さらに,表面平坦性,密着性,耐熱性,フレキシブル性などの特性も,有機デバイスをフィルム基板に形成する用途に適したレベルを達成しているとする。