図1 LTEと複数の3G規格に対応する統合型チップセットを2010年中ごろにサンプル出荷予定
図1 LTEと複数の3G規格に対応する統合型チップセットを2010年中ごろにサンプル出荷予定
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図2  Qualcomm社 Vice President, Product Management, Qualcomm CDMA TechnologiesのAlex Katouzian氏
図2  Qualcomm社 Vice President, Product Management, Qualcomm CDMA TechnologiesのAlex Katouzian氏
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図3 二つの搬送波を束ねて送信するDC-HSDPAのデモ
図3 二つの搬送波を束ねて送信するDC-HSDPAのデモ
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図4 2×2 MIMOを利用するHSPA+のデモ
図4 2×2 MIMOを利用するHSPA+のデモ
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図5 今回のDC-HSDPAおよびHSPA+の送受信デモに利用した,「MDM8200」を搭載する試験機
図5 今回のDC-HSDPAおよびHSPA+の送受信デモに利用した,「MDM8200」を搭載する試験機
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 米Qualcomm Inc.はスペインのバルセロナで開催中の「Mobile World Congress 2009」において,LTEと複数の3G規格に対応する統合型チップセット「MSM8960」を発表した。LTEおよびCDMA2000 1xEV-DO Rev. B,DC-HSDPAに対応する送受信用モデムと,1GHzで動作するアプリケーション・プロセサや1080p映像の符号化/復号化回路などを統合した。2010年中ごろにサンプル出荷を開始する予定である。

 Qualcomm社は前回のMobile World Congressにおいて,LTEおよびCDMA2000 1xEV-DO Rev. B,DC-HSDPAに対応する送受信用チップセット「MDM9600」を発表していた。MDM9600は主にUSBモデム型などのデータ通信端末に向けたものだが,今回発表したMSM8960は高機能な携帯電話機を想定したものであり,アプリケーション・プロセサや各種のマルチメディア処理機能も備える(図1)。アプリケーション・プロセサには,Qualcomm社が英ARM Ltd.のアーキテクチャ・ライセンス契約に基づいて独自に拡張した,ARMの命令セット互換のプロセサ「Scorpion」を採用した。Scorpionは,Qualcomm社のMID向けプラットフォーム「Snapdragon」に採用されているものである(Tech-On!の関連記事)。

 Qualcomm社は「LTEとHSPAは,LTEが始まってからもしばらくの間は共存するはずだ。3Gの自然な進化である『マルチキャリアHSPA+』(注:Qualcomm社はDC-HSDPAをこのように表現している)を選ぶ携帯電話事業者も多く存在するだろう」(Vice President, Product Management, Qualcomm CDMA TechnologiesのAlex Katouzian氏,図2)とみる。その上で,CDMA2000系の方式からLTEに移行する携帯電話事業者や,W-CDMA系の方式からLTEに移行する携帯電話事業者が存在するため,「チップセットを複数の3G規格に対応させておくことが非常に大事になっている」(Alex Katouzian氏)とする。

 今回のMobile World CongressでQualcomm社は,DC-HSDPAおよびHSPA+の送受信のデモを見せた。3GPPのRelease 8で定められる見込みのDC-HSDPAは,搬送波を二重化することで下りの理論上の最大データ伝送速度を42Mビット/秒まで高める方式である。今回のデモ展示は,MDM8200を搭載したテスト機に,二つの搬送波を束ねたRF信号を有線で送り,その受信性能を示すというもの。この展示では,30Mビット/秒を超えるデータ伝送速度が達成できていた(図3)。

 HSPA+(HSPA Evolution)は3GPPのRelease 7で定められた方式で,2×2のMIMO(multiple-input, multiple-output)を用いることによって下りの最大データ伝送速度を理論上28Mビット/秒に高める。MDM8200を搭載した試験端末に二つのRF信号を有線で入力するシステムにおいて,20Mビット/秒超のデータ伝送速度を実現していた(図4図5)。