前回の記事:【写真で見るDIGIC 4】その2,やはりルールは65nm

 「DIGIC 4」と前世代品「DIGIC 3」の間では物理的な寸法などにどんな違いがあるのか。DIGIC 3についてもヴァン・パートナーズの協力を得て,半導体パッケージや配線層を除去して観察した。ただし,論理回路のゲート数やメモリ容量の推定といった詳細な調査は,時間的な制約から見送っている。DIGIC 3は「PowerShot A470」から取り出した。安価な機種だが,キヤノンの説明通りならば「IXY DIGITAL」シリーズとほとんど同じ回路を集積しているはずだ。

 今回用いたDIGIC 3は,メモリ・チップを載せていなかったので,半導体パッケージを即座に除去できた。現れたチップの寸法は,6500μm×6500μm×220μmである(DIGIC 4との比較表を末尾に掲載しております)。

DIGIC 3(型番はDIGIC E142)のチップ全体を撮影。配線層ははがしていない。パッド数は401個。パッド・ピッチは最小で50μmだった。
DIGIC 3(型番はDIGIC E142)のチップ全体を撮影。配線層ははがしていない。パッド数は401個。パッド・ピッチは最小で50μmだった。 (画像のクリックで拡大)

 配線層を取り除き,メモリの配置を確認した。

SRAMは3種類。それぞれ赤,青,黄緑で色分けしている(写真右上に青線の四角があるように見えますが,これは元からあるものでSRAMを示すために追記したものではありません)。フラッシュ・メモリは白色で示した。
SRAMは3種類。それぞれ赤,青,黄緑で色分けしている(写真右上に青線の四角があるように見えますが,これは元からあるものでSRAMを示すために追記したものではありません)。フラッシュ・メモリは白色で示した。 (画像のクリックで拡大)

 SEMで断面を除くと,配線層が6層あった。

Alで造られた最上層は写真に写っていない。
Alで造られた最上層は写真に写っていない。 (画像のクリックで拡大)

 ゲート長の計測したヴァン・パートナーズは,DIGIC 3の設計ルールを130nm程度と推定した。

ロジック部のゲート長は95~98nmだった。
ロジック部のゲート長は95~98nmだった。 (画像のクリックで拡大)

3種類のSRAMの中でも,合計した容量が最も多かったSRAMのSEM像。ゲート長は95~100nmだった。ほかの2種類のSRAMのゲート長はそれぞれ93~116nm,86~177nmだった。
3種類のSRAMの中でも,合計した容量が最も多かったSRAMのSEM像。ゲート長は95~100nmだった。ほかの2種類のSRAMのゲート長はそれぞれ93~116nm,86~177nmだった。 (画像のクリックで拡大)

 以上の調査結果を比較表にまとめた。DIGIC 4のチップ面積は,DIGIC 3に比べて20%大きい。H.264の符号化/復号化といった機能の増大を,微細化や配線層の追加で乗り切ったことがうかがえる(関連記事)。DIGIC 4のチップの厚さがDIGIC 3の半分ほどなのは,PoPを用いたためだろう。

ヴァン・パートナーズが作成した表を,日経エレクトロニクスが編集。
ヴァン・パートナーズが作成した表を,日経エレクトロニクスが編集。 (画像のクリックで拡大)

――連載終わり――

この記事を英語で読む