8ビット~16ビットに続いてNECエレクトロニクスが展開する32ビット~64ビットのマイコンの系譜を振り返ってみる。まず同社の32ビット品および64ビット品の系譜には,8ビット品や16ビット品と同様にアーキテクチャが異なる製品の系列が数多く登場する。具体的には,MIPS Technologies社のMIPS32/64アーキテクチャ互換品,英ARM社のアーキテクチャを採用した製品,同社独自のアーキテクチャを備えた製品である。

 まずMIPS32/64互換品の系列から説明する。NEC(当時)は,ファブレスのプロセサ・メーカーである米MIPS Computer Systems社(現在のMIPS Technologies社)のパートナーとして,同社のプロセサを生産。それに自社の型名を付けて提供していた。最初に手掛けたのは,32ビット・プロセサ「R3000」である。これを「VR3000」として展開した。1990年にMIPS Computer Systems社が,R3000の改良型である「R3000A」を開発すると,これもNECは「VR3000A」として生産している。


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 この後も,MIPS Computer Systems社が,「R4000」,高性能版の「R5000」,ハイエンド・ワークステーション向けの「R10000」など新しいプロセサを開発すると,これを自社の製品ラインアップに加えていった。まず,1991年にR4000を「VR4000」として製品化(ただし,実際の出荷開始は1993年にまでずれ込んだ)。さらに「R4200」を「VR4200」,「R4400」を「VR4400」として1993年から量産を始めている。1995年には「R4300i」を「VR4300」として製品化した。このうち,VR4200やVR4300は,プロセサそのものの開発に少なからずかかわっていたようだ。

 VR4200やVR4400は,ワークステーションやスーパーコンピュータ向けに展開しており,組み込み用途にはあまり使われていなかった。VR4300を基に,PDA(携帯用情報端末)などの用途に向けた「VR4305」や「VR4310」といった製品が1998年に生まれているが,この系列はここで打ち止めになっている。

進化を続けたVR4000

 一方,ローエンドにあたるVR4000は,その後も性能や集積度を上げながら着々と進化を続ける。1995年に「VR4100」,1996年および1997年には,それぞれ「VR4101」と「VR4102」を製品化。1998年には,「VR4111」が登場している。こちらはVR4300系列の製品に代わってPDAなどに採用された。このVR4111の派生品が「VR4181」である。動作周波数はVR4111よりも抑え,代わりに周辺回路を充実させた品種である。製造プロセスの変更によって,VR4111の動作周波数を高めた「VR4121」。その後継品に当たる「VR4122」といった品種もある。

 VR4100コアをベースに2命令同時実行のスーパースカラを採り入れた「VR4131」も製品化されている。PDAなどのマーケットを狙った製品だったが,ここでは当初の見込みほど需要は伸びなかったようだ。ただし,優れたパフォーマンスを備えていたことから,低価格サーバやネットワーク管理サーバといった特定の分野で採用されている。このVR4131コアに暗号処理アクセラレータを追加した「VR4133」という製品もある。