キヤノンのカメラ用画像処理LSI「DIGIC」シリーズは,日本発の民生機器向け品種としてはまれな成功を収め続けるSoCといえるだろう。同社は,最も安価なコンパクト機から一眼レフ機までDIGICを使い回すことで,高機能と低コストを両立させている。キヤノンは2008年に発売したカメラから順次,第4世代品「DIGIC 4」を採用し始めた。その中身はいかなるものか。LSIの解析を手掛けるヴァン・パートナーズの協力を得て,物理的な側面を見てみた。

 最初に,DIGIC 4を搭載したデジタル・カメラ「IXY DIGITAL 920IS」を試用・分解した。


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 DIGIC 4を搭載するデジタル・カメラの特徴の一つに顔検出と顔追尾という機能がある。キヤノンはこれらの処理に用いるパラメータを公表していないが,他社では色情報を使った例がある。そこで試しに2匹の猫を撮ってみると,大きな差があった。白い猫なら顔を背けてもピントが合い続けるが,縞模様(いわゆるキジトラ)の猫には全く効かなかった。キヤノンもまた,色情報をベースに検出・追尾をするアルゴリズムを備えたのかもしれない。


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 分解を始めて気付いたのは,これまで分解した数機種のコンパクト機と比べて組み立てにくそうなこと。細かな樹脂部品も,樹脂部品を留めるネジの種類も多いようだ。ただ,この比較は詳しいデータに基づかない。カメラ業界でトップ・クラスの売れ行きを誇る機種,という先入観が「意外さ」を抱いた背景にあるのだろう。


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 分解で取り出した部品を観察してみる。メイン基板に搭載された部品も,撮像素子周辺も,さらにはモータも標準的な部品を使っている。記事を書く立場からすると,こういう場合ちょっと困るが,メーカーにとってはビジネス上,奇手など使わないほうがいいことは確かだ。


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 次回はDIGIC 4をメイン基板から外して,半導体パッケージを溶かし,光学顕微鏡やSEMで観察した結果を報告する。

【写真で見るDIGIC 4】その2,やはりルールは65nm
【写真で見るDIGIC 4】その3,DIGIC 3と見比べてみる

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