Intel社のAl-Schamma氏
Intel社のAl-Schamma氏
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 先進国のパソコン市場が飽和するなか,新興国市場の重要性が高まっている。パソコン業界の盟主,米Intel Corp.も新興国市場の成長に期待を寄せている。Intel社で中東地域を担当する,同社Gulf Countries General ManagerのSamir Al-Schamma氏に話を聞いた。

——UAEのドバイに拠点を置くIntel Gulf Countriesは中東のどの国を担当しているのか。

Al-Schamma氏 サウジアラビアを除く,GCC(湾岸協力会議)諸国と,イエメン,イラクだ。以前はサウジアラビアも含んでいたが,市場が大きくなったので別の拠点が担当している。私が担当しているこれらの地域を含め,Intel社内で「META(GCC,サウジアラビア,トルコ,エジプト,レバント(シリア,レバノン,ヨルダン,イスラエル),アフリカ)」と呼ぶ中東・アフリカ地域は,世界でも売上げの成長率で中国に次いで2番目に高い。
 METAは非常に興味深いマーケットでもある。ある地域は先進国に住む人々と同様に裕福で新技術に慣れ親しんでいる一方,インフラがまだ何もない典型的な発展途上国もある。このため,我々は先進国向けと発展途上国向けの2つの戦略を用意している。
 METAで市場規模が大きいのは,UAE(アラブ首長国連邦),サウジアラビア,トルコで,これらの市場は今後も成長が期待できる。クウェート,カタール,エジプト,リビア,アルジェリア,ケニア,ナイジェリアなども重要な市場と考えている。

——Intel社としては,どの製品分野に期待しているのか。

Al-Schamma氏 中東では,パソコン市場の成長に大いに期待が持てる。中東,特にGCC諸国では携帯電話機は既にかなり普及している。例えば,UAEでは携帯電話機を2台以上持っている人も多く,普及率は100%を超えている。これに対して,パソコンの普及率は30%程度に過ぎない。他のGCC諸国では10~20%程度だろう。
 パソコンの普及が遅れている理由は,主に2つある。一つは,ブロードバンドの普及が他の地域と比較して遅れたこと。もう一つは,アラビア語のコンテンツが少ないことだ。UAEはともかく,サウジアラビアなどでは英語が苦手の人も多い。なのに,インターネット上にアラビア語のコンテンツは全体の1%以下しかない。METAの人口は3億人以上もいるのに,あまりに少ないのだ。世界の人口比率でいえば,アラビア語のコンテンツが5%程度あってしかるべきだ。

——こうした問題は解決されていくのか。

Al-Schamma氏 各国政府はそのことを認識し,ブロードバンドの普及率を積極的に高めようとしている。特に,3Gに比較してインフラの構築コストが安いWiMAXが注目されている。例えば,サウジアラビアの首都リヤドには500万人が居住するが,市内は70kmの範囲に広がっている。これらの地域を光ファイバーでカバーするのは,かなりコストがかかる。既にサウジアラビア政府は,WiMAXのライセンスを4社に提供している。WiMAXを使ったVoIPサービスに対する期待は大きい。
 一方,パソコンでは「NetBook」が注目製品だ。GCC諸国の人口構成は,55%以上が20歳以下と非常に若い。こうした人達のパソコンの用途はインターネット,特にSNSなどのソーシャル・ネットワークで,それらの用途には低価格なNetBookで十分である。
 ただし,NetBookはすべての用途をカバーするものでない。ビデオ編集など処理の負荷が重い用途には向いていないことを理解する必要がある。

——UAE拠点が現在手がけている主な事業は何か。

Al-Schamma氏 我々の最も重要な仕事は,顧客であるハードウエア・メーカーが製品を販売できる市場を造ることだ。そのために,Intel社が世界の新興国で展開している「World Ahead Program」を導入している。具体的には,新興国に住む人々が新技術を使える仕組みを構築したり,インターネットに接続できるようにしたり,IT教育などを行うプログラムである。また,ドバイ拠点ではHPC(High Performance Computing)が消費するエネルギーに関する研究も行っている。現在では個別の製品開発は手がけていないが,今後はその可能性もある。