ソニーは2009年1月22日,緊急のリストラを発表した後,報道陣やアナリストからの質問に回答した。回答者は,同社会長兼CEOのハワード・ストリンガー氏と,社長兼エレクトロニクスCEOの中鉢良治氏,執行役EVP兼CFOの大根田伸行氏の3人(関連記事1)(関連記事2)(関連記事3)。

技術者,社員の気持ち

──「エンジニアがソニーのコアコンピタンスの一つである。その上で,技術者を鼓舞することが必要である」とストリンガー氏は述べた。しかし,今回のリストラで生産拠点の統廃合や人員削減を実施し,アウトソーシングの割合を増やすという。これでは技術者の負担が増えるだけでなく,ソニー独自の設計が減っていくように思える。むしろ,技術者のモチベーションは下がるのではないか。

ストリンガー氏:変化は仕方がない。変革を幹部がいかに管理するかが将来の成功を決める。ソフトウエアの技術者が多くなってくる。ハードウエアの技術者の代わりをソフトウエアの技術者がするということもあり得る。ソニーではソフトウエアの技術者の価値がもっと分かってきた。その(ハードウエアとソフトウエアの)二つを組み合わせることで我々は生き残り,成功していく。そのためには,互いのコミュニケーションが重要だ。
 ソニーの礎はハードウエアの技術者で,これは変わらないし,より高度になっていくだろう。高度なエンジニアリングがソニーの価値だ。ハードウエアの技術者とソフトウエアの技術者の関係がもっと親密に成らなければならない。過去はそれぞれが縦割りだった。
 現在は,ソフトウエアの技術者が非常に重要な役割を果たすようになっている。特に若い技術者が,ハードウエアとの関係がもっと緊密にならないといけないということに気づいている。
 製品が汎用化する中で競争するには,変わっていき,戦略的な方向を目指す必要がある。 
 これまでにソニーは多くの教訓を学んできた。我々はハードウエアだけでなく,ソフトウエアもゲームも扱う会社である。そのすべてを融合することで素晴らしい力になる。すべての要素をまとめることができれば,我々は無敵だ。要素はすべて社内にある。いかに人を刺激してそれらを融合させていくかだ。

──ソニーは苦境の中,復活を目指して今の新体制が発足した。その復活の兆しが見えたところで,世界的な経済危機に見舞われた。これにより,正社員も含めた人員削減に手を付けることになった。ソニーを今になって去らなければならない人が出てしまった状況だ。これについて経営者としてはどのような心境で決断したのか。

中鉢氏:社長の立場として,しなければならないことは明確に認識しているつもりだ。もちろん,収益性も考えなければならないし,社員のモチベーションなど,いろいろ配慮しなければならないことは重々承知している。ただ,ソニーが世界で勝ち抜くためには,人件費を含めた固定費の削減がどうしても必要だ。我々の努力の範囲を超えていると考えざるを得ないという結論に達した。
 残された人員でやるべきことは,これまでの冗長性のある(非効率な)オペレーションからオープンなオペレーションを進めることだ。つまり,競争領域は自前でやるが,非競争領域はアウトソーシングなどで効率化の改善を図っていきたい。

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