左から,新日本石油 代表取締役社長の西尾進路氏,新会社 代表取締役副社長で新日本石油 国際事業本部 薄膜太陽電池プロジェクト室 室長の湯原尚一郎氏,新会社 代表取締役社長で,三洋半導体 ビジネス開発室 室長の五十嵐未知人氏,三洋電機 代表取締役社長の佐野精一郎氏の4人。
左から,新日本石油 代表取締役社長の西尾進路氏,新会社 代表取締役副社長で新日本石油 国際事業本部 薄膜太陽電池プロジェクト室 室長の湯原尚一郎氏,新会社 代表取締役社長で,三洋半導体 ビジネス開発室 室長の五十嵐未知人氏,三洋電機 代表取締役社長の佐野精一郎氏の4人。
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 三洋電機と新日本石油(ENEOS)は2009年1月23日,アモルファスSiから成る薄膜太陽電池の製造や発電システムの展開を担う合弁会社「三洋ENEOSソーラー」を同日付けで設立したと正式に発表した(関連記事)。出資比率は50対50。三洋電機の親会社となったパナソニックからの直接の出資は現時点ではない。

 両社の役割分担は,三洋電機が薄膜太陽電池の製造技術の開発およびセルやモジュールの製造,新日本石油がモジュールを利用した大規模発電システムの構築や流通・販売を担当する。新日本石油は,セルの製造時にも「(水素ガスなど)ガスの原材料技術も提供する」とする。「太陽電池,燃料電池,蓄電池の『電池3兄弟』を柱として総合エネルギー・プロバイダを目指す中での取り組み」(新日本石油 代表取締役社長の西尾進路氏)という。

 三洋電機の薄膜太陽電池は,アモルファスSiと微結晶Siから成るタンデム技術を用いたもの。生産規模および想定するエネルギー変換効率は,2010年度にパイロット的に80MW/年で10%,その後,2015年度には1GW/年,12%以上と本格的な量産に入る計画。2020年度には2GW/年を目指すという。

 三洋電機は,これまでエネルギー変換効率が高い「HIT太陽電池」を推進してきたが,HIT太陽電池は戸建て住宅などの屋根に載せる用途向け。一方,今回の薄膜太陽電池はもっぱら砂漠などでの大規模発電システムへの展開を計り,両者の競合はないとする。

 発電システムの設置先は,主に中東を想定する。「当初は薄膜太陽電池の研究拠点のある岐阜県で生産するが,本格量産の工場は中東など供給先に近いところにするかもしれない」(三洋電機 代表取締役社長の佐野精一郎氏)。

不況も出遅れも「心配なし」

 2009年の太陽電池市場は,不況や原油価格の下落による市場の停滞と大幅な供給過剰が重なり,メーカーの大規模な淘汰や価格下落が避けられないという見方が大勢である(関連記事)。加えて,薄膜太陽電池の量産では,中国Suntech Power Holdings Co.,Ltd.が2009年1月14日に「1GW/年の生産態勢を整えた」と発表したばかり(関連記事)。シャープも2010年4月までに1GW/年の生産態勢を確立する計画である。その中で,「2015年度に1GW/年」という計画は,大幅な出遅れと見えないこともない。

 記者会見での質問に対し,三洋電機の佐野氏はこれら二つの懸念を一蹴した。「太陽電池は2020年,2050年を見据えた長期的な事業。短期的な不況はまったく心配していない。(製造装置を丸ごと購入するなどして)薄膜太陽電池の生産で先行するメーカーの変換効率は7%程度で打ち止めだが,我々は研究開発を並行して進め,10%,12%,そしてそれ以上と技術の向上が続く」(佐野氏)として,出遅れも技術や信頼性の優位性でカバーできるとの見方を示した。

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