【ケーススタディ】ノウハウを形式化,仕組み化した日産自動車
熟練者が持つノウハウを形式知化してITシステムに盛り込み,他のメンバーにそれを利用できるようにして業務の底上げを図る試みがさまざまな企業で進行し始めている。ノウハウといっても,意外と単純なものをシステム化することでも,かなりの成果を得られるようだ。例えば部品のどこを正面としてとらえるか,基準をどこに置いてものを考えるかなど,熟練者が何気なく処理していることが形式知化の対象になる。
日産自動車では,改革プロジェクト「V3P」推進の過程において,工程設計プロセスでの検討品質が大幅に向上したと同時に,必要な工数も増加する,という現象が見られた。詳細検討を事前に実施できるツールが手に入ったため,技術者が時間をかけてしまったためという。検討品質が上がったことについて後工程の加工現場や製造部署の評価は高かったため,この検討品質を維持したまま,ベテラン技術者の工数を減らす工夫をすることにした。
そこでノウハウの一般化,使える化を図った。例えば治具の3次元モデリングに関して,ベテラン技術者が無意識に行っていることは何かを分析(図)。治具部品を配置するとき,部品によって配置する基準座標を変えていることが分かった。ワークに触れる部品はワーク基準で配置,その他の部品は治具本体基準で配置していた。
その結果,標準部品を保存する際の向きや保存位置基準を定義し,向きと基準点を形式知化した。ベテランの技術者何人かと話し合って,どういった座標系が最低限必要なのか,またそれらの座標系はそれぞれどのような位置関係にあるかを調べ上げて基準化し,六つの座標系に整理した。
このような取り組みは「『当たり前じゃないか』と思われるかもしれないが,割と大変」(日産自動車パワートレイン生産技術本部パワートレイン生産技術部工具・ツーリンググループの竹内宏治氏)。当たり前のようでも,その先の取り組みの基礎になることでもある。
部品を配置するとき,例えばワークのクランパーを長くする必要があれば,ベテランの工程設計者は無意識のうちに「こんな長いクランプアームにしたら壊れてしまう」と思って,厚みを持たせるような変更を加える。ここの部分も形式知化,使える化するため,CADシステム「ICAD/SX」に数式定義を組み込み,パラメトリック設計を実施している。こうして,ベテラン設計者のやることの何%かをあまり熟練度の高くないメンバーでも分担できるようにした。
本記事は2007年4月に開催した「コラボレィティブものづくりデイ2007」での特別講演の内容を掲載した『日経ものづくり』2007年6月号特報「業務の“質”を高めるIT」を再編集したものです。内容は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります。












