タッチ・パネルやタッチ・スイッチといった「タッチ・センサ」が,電子機器に本格的に使われ始めた。誰にでも使いやすい簡単なユーザー・インタフェースを提供できるのはもちろん,新機能の追加やデザイン性の向上など機器に新たな付加価値をもたらすからだ。今回は,タッチ・パネルが切り開く新しい世界を感じさせる製品群を紹介する。連載の目次はこちら(本記事は,『日経エレクトロニクス』,2008年6月2日号,pp.44-45から転載しました。内容は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

 韓国Samsung Electronics Co., Ltd.が2008年2月に発表した携帯電話機「SGH-U900 Soul」(左上の写真)。ここにはユーザーの目を引く仕掛けが用意された。メイン・パネル下部のサブ画面に表示される操作ボタンの内容が,アプリケーションに応じて変化するのだ。音楽再生の操作メニューが表示される場合もあれば,Googleの検索ボタンが表示されることもある。

 松下電器産業が2008年4月に発売したデジタル・カメラ「LUMIX DMCFX500」(右下の写真)も,便利な機能を持つ。画面内の被写体に触れることで,被写体が動いてもピントと露出を調整しながら自動追尾する。

 これらの機能は,以前からの機械式ボタンを使っては実現できないか,もしくは実現できたとしても操作が煩雑になり過ぎる。両社は,タッチ・センサ(タッチ・パネルとタッチ・スイッチの総称)とソフトウエアの組み合わせで,こうした特徴を機器に盛り込んだ。

 タッチ・センサは決して目新しい技術ではない。既に,券売機や銀行のATMなど街中にあふれている。しかし,民生機器への応用という点では,まだ入り口に立ったばかりである。

 上の事例にあるように,タッチ・センサは,従来はなかったユーザー・インタフェースや機能,デザインなどを民生機器にもたらすツールになり得る。民生機器の価格競争が激化し,ハードウエアによる差別化が難しくなってきた昨今,タッチ・センサの使いこなしは機器メーカーにとって差異化のポイントになりそうだ。

―― 次回へ続く ――