前回は,タッチ・センサの利用が,今後の民生機器開発で大きな意味を持つことを示した。今回は,タッチ・センサの価格動向や,技術の変化を解説する。連載の目次はこちら(本記事は,『日経エレクトロニクス』,2008年6月2日号,pp.50-55から転載しました。内容は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

価格はこの1年で30%下落

 タッチ・センサの利用環境は今後大きく改善され,機器メーカーにとってはますます採用しやすくなるだろう。具体的には,(2)価格が下落する,(2)選択肢が増加する,(3)技術の進化で課題が解決される,などの変化が起こる。

 価格の下落は,市場の急成長に伴うタッチ・センサ・メーカーによる設備増強によってもたらされる。当面は,年率数十%のペースで下落が進む可能性がある。

 タッチ・センサは検出の方法によって5種類ある(表1)。「抵抗膜」「静電容量」「超音波」「赤外線」「電磁誘導」である注1)。このうち最も普及しているのは,搭載台数で全体の約90%を占める抵抗膜方式のタッチ・パネル。これに次ぐのが,iPhoneなどに採用され,最近注目を集めている静電容量方式のタッチ・スイッチおよびタッチ・パネルである。

注1) 赤外線方式は,発光素子が発する赤外光を遮断,あるいは反射光を受光素子で受けることで,触れた位置を検出する。縦横にマトリクス状に受発光素子を配置するタイプは券売機などに,三角測量で計算するタイプは大型ディスプレイに利用されている。額縁部分に受発光素子を搭載する必要があるので額縁部分が太くなったり,コストアップにつながったりする。このため,用途は一部に限定される。電磁誘導方式は透過率と耐久性は高いが,入力を検知するには専用のペンが必要なため,現在はタブレット型パソコンなどでの利用にとどまる。