東芝が試作したUMPCは,画面を指でなぞって搭載したWindows OSを操作する。デスクトップ画面上で指を下から上に走らせるとソフトウエア・キーボードが現れ,逆に走らせるとそれが閉じるといった具合である。

 従来のボタン操作ではあまり使われなかった機能をタッチ・センサに割り当て,機能の活用を促す試みも出てきた。松下電器産業のDMC-FX500は,撮影モードをマニュアル露出とした場合のシャッター・スピードや絞りの調整を,タッチ・センサを使って画面上で操作できるようにした。液晶画面の右端に絞りを調整する縦のバーが,画面下部にシャッター・スピード用の横のバーが表示され,そこにある青色の点を指で触れて動かすと,青い点の動きに応じてシャッター・スピードや絞りが切り替わる。「操作を簡単にすることで,ユーザーの多くが使いにくかったマニュアル操作の敷居を下げる」(同社)のが狙いである。

 いずれのケースも,複雑なボタン操作や,機器のマニュアルを読まないと操作の習得ができない,という従来の課題解決に貢献する。

メニュー画面をアプリごとに変える

 ソフトウエアの作り込みによっては,従来のキー・パッドや機械式スイッチでは実現できなかった新機能を,タッチ・センサを使い機器に付加できる。

 例えば,アプリケーションごとに機器の操作メニューやアイコンを切り替えることができる。この機能は,携帯電話機のように多機能化が進む機器で,特に威力を発揮する。「さまざまなソリューションを動かすには,固定式のボタンよりも画面自体をユーザー・インタフェースにできるタッチ・センサが適している」(アップルジャパンの一井氏)。

 機械式スイッチであれば,一度決めた配置は変更できないが,タッチ・センサはソフトウエアとの組み合わせで柔軟な対応を可能にする。

斬新なデザインを実現できる

 タッチ・センサを,機器のデザイン性を向上する目的で採用する手もある。機械式スイッチの機能をソフトウエアで実装することで,それらを排除できるからだ。韓国LG Electronics Inc. の携帯電話機「Chocolate」シリーズは,その典型例である。

 Chocolateでは機械式スイッチを筐体表面から排除し,スライドを閉じた際にチョコレート・バーのように見える外観デザインを実現した。「タッチ・センサを採用することで筐体表面をフラットにし,画面と操作部分との境界をなくした」(LG電子 デザイン経営センター東京デザイン分所 責任研究員の加賀美淳一氏)。こうした斬新なデザインが,全世界で累計1500万台以上を販売するというヒットにつながった(次ページの「全面タッチ・パネルの先駆者はLG社」参照)。

 電子機器の販売競争が激化するなか,デザインが機器を差異化する要因として重要度を増している。機器メーカーにとって,タッチ・センサはデザインを向上するための切り札になり得る。